前巻感想はこちら↓
読書感想:君は初恋の人、の娘2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、言うまでもない事であるがイッチこと一悟とルナのラブコメは許されぬものである。そもそもどう考えても、結ばれたとしても茨の道は確定ともいえる恋である。それでも恋をした、恋をしてしまったルナ。だがしかし、ここまで読んでこられた画面の前の読者様であればもうご存じであろう。強敵となる恋敵は既に、すぐ側に潜んでいると言う事を。
そう、和奏である。一悟の部下であり、職場においてはルナよりも近いと言っても過言ではない彼女。そんな彼女が前巻のエピローグで炸裂させた爆弾が、舞台を揺らして二人の思いを揺らしていくのが今巻なのである。
「私、イッチを取られたくない」
きっと世界的に考えれば、常識的に考えれば一悟は和奏と結ばれるべき。自身は本当に彼の隣に相応しいのか、自分の思いは本当に正しいのか。何処か仄暗くもある独占欲を見せながらも、ルナの思いは揺れ惑い、追い詰められていく。
そして同時に、一悟の思いも揺れ惑い突き付けられた選択肢に追い詰められていく。初恋の人の娘であるルナを選ぶべきか、今まで気づきもしなかった和奏の思いを選ぶべきかという選択肢に。
「それで、世界中が納得する」
ルナを狙うストーカー騒動に振り回されたり、和奏と初めてのデートをしてみたり。そんな中、ルナと和奏の間の情報共有もなされ。二人の始まりの場所、ルナは納得できぬ自分の心をねじ伏せて、半ば強引に断ち切るかのように一悟に別れを告げる。彼に幸せになってほしいからと、和奏の方に突き飛ばす。
その心を、彼女の思いを納得すべきなのか。受容するべきなのか。懊悩し夢の中に沈む一悟の元に訪れたのは朔良の幻影。自身の心の写し鏡だからこそ突き付けてくれる、どこか本物を感じさせる在りし日の幻影。
「イッチ、本当はもう、答えが出てるんじゃない?」
「幸せになってね、イッチ」
彼女に諭され向き合う己の心。心の中に導き出される、この後どうするべきかの答え。朔良の幻影に背を押され、夢から覚めた一悟は己の答えの元へと駆ける。
「あまりにも重い選択なのはわかっている。でも、君がそれでもいいと言うなら、どうか、僕を選んで欲しい」
そう、ルナの元へ。和奏の思いに自らの手で決着をつけ、彼はルナと向き合い己の心を告げ、彼女に選択を指し示す。どこか残酷で重くて、けれど真っ直ぐで。真っ直ぐに向き合うからこその答えを。新たに始める為の願いを。一方的な未熟を二人で乗り越えていく為の答えを。
「これからもよろしく。幸せにするよ、ルナ」
「うん・・・・・・よろしく、お願いします」
社会的通念だって問題がある。いつか新たな問題に立ち塞がられる時だって来る。けれどそれでも、二人で歩幅を合わせ進んでいく。それこそが二人の選んだ答えだから。
不純愛な中、最後に二人だからこその答えが示される今巻。
シリーズファンの皆様は是非、最後まで見届けてほしい次第である。