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読書感想:私の初恋相手がキスしてた2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、海と高空とそしてシホ。三人が作り出している三角関係に流れているのは、我々読者の情緒をこれでもかとかき乱しぐちゃぐちゃにしてくる、とんでもない愛の感情、というのは前巻までを読まれた読者様であればご存じであろう。ではいよいよ最終巻となる今巻では、一体何を見せてくれるのか。それは彼女達の愛が選んだ景色のその果ての結果なのだ。
では一体、どういう結果が待っているのか、と言うとであるが。まずはこの作品のタイトルをもう一度おさらいしておきたい。「私の初恋相手がキスしてた」。それは既に起きた事、過去形。ではここから、空にとっての勝ち目というのは何処にあるのだろうか。ここまで言ってしまえば、もう答えはお分かりかもしれない。
「姉妹で愛し合って、誰かに不都合あるの?」
「つまりわたしと海は相性抜群」
前巻の最後、判明したシホと海の意外な関係。それを知っても尚、彼女は既に知っていたと妖しく、どこかからりと微笑んで。心を揺らす海に何か不都合があるのか、と問いかけ。海はその関係を受けいれ、新たな関係として姉と言うものを加えた事でシスコンまっしぐらに突き進んでいく。
そんな彼女を見ながらも結局は何も出来ず。ふとした瞬間の逢瀬を重ねたり、三人で出かけたり。何でもない関係の上、積み重ねていくあやふやな時間。その中、ふと海は将来についての考えを漏らす。高空にとっては寝耳に水の考え方を。
「終わりたいんや、あたし」
それはシホに愛される自分でいるうちに自分を終わらせるという事。シホという存在に自分の全てを捧げているからこそ選べる、傍から聞いてるだけなら馬鹿じゃないかと言いたくなる答え。だが難儀な生き方をしてきたからか海はこれ以外ないと、どこか心に決めたように言う。
止める間もなく、海は高空達と暮らす家から去り、シホの元へ走り。引き留める事も出来ず、見送る事もなく。消化しきれぬ思いを抱えながらも、時間は過ぎていく中。シホからの招きに応じ彼女達の元を訪ねた高空は、彼女の好みに応じて自分を変えた海と久々の再会を果たす。
「二度と会いに来るかよ、ばーか」
気が付かぬ間に、自分の知らぬ怪物性を開花させていた彼女を見、自分の中で何かが折れる。心が墜落し、初恋の思いは何処かへ飛んでいく。
「ごめんね。私、背の低い子が好みだから」
そして後輩や謎の宇宙飛行士との一瞬の邂逅の先に。もう一人の怪物が目を覚ます。悪に触れ、また悪へと気が付かぬ間に羽化していくのだ。
これは愛の物語。見送って手を振って、自分勝手に歩き出す愛の物語。最後まで情緒をぐちゃぐちゃにされてほしい。
きっと貴方も満足できるはずである。