読書感想:小悪魔少女は、画面の向こうでデレている

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 さて、突然ではあるが私の名前、「真白優樹」は勿論ハンドルネームである。実際の名前と掠ってすらいないし、今、画面の前の読者の皆様が抱かれているかもしれぬ私の印象と実際の私の性格は半分くらいは似て非なるものがある所である。と、いう話はともかくネットというものは匿名性を持つ所が多々あり、ネット上においては実際の名前とは違うもう一つの名前、もう一つの顔を以て活動されている読者様も多いであろう。

 

 

だからこそ、私達はネット上においては実際に向き合っていないと言っても過言ではないのかもしれぬ。ネット上における顔というフィルターを通じて、本質は見ていないと言ってもいいのかもしれない。

 

 しかし、今の情勢においてそんな状況は寧ろ普通と言っても過言ではないのかもしれない。そんな状況が前提となるのがこの作品なのである。

 

かの病の流行により、一斉休校からのリモート授業になったとある高校。その高校のとあるクラスにおいて今、秘かに流行りの兆しを見せているものがあった。

 

 それは匿名チャット。今の時代においては若干古いともいえる、けれど一周回って新しいと言えるかもしれぬアングラなごっこ遊び。正体を知ることはタブーなこの場で、特に周囲と関わらぬ少年、文人こと「読み専」は「ミッチ」と名乗る少女と思しき謎の存在に今日もまた翻弄されていた。

 

「雰囲気とかで気づけよ、もう!」

 

どこか小悪魔ちっくに、アプローチをかけて文人をどきどきさせる「ミッチ」。その正体は誰か。それは一時期離ればなれとなって、再会した彼の幼馴染である千夜(表紙)。彼に変わらぬ好意を抱き、けれど勇気を出せぬ臆病な少女である。

 

時に自爆してわたわたしてしまったり、真意が分からず悶々としたり。昔にフラれたと勘違いした千夜と、拒絶されたと勘違いしている文人のやり取りはどこかすれ違い交わらず。そこに、文人に好意を抱いた級友、満の思惑も絡み合い。複雑に過ぎる人間関係と、ネット上で仮面をかぶっているからこその何処かサスペンス染みた人間関係が形成されていく。

 

 しかし、この作品はラブコメである。ネット越しにでもお互いを何処かで感じている二人の、もどかしくとも甘々なラブコメである。

 

「もう・・・・・・たくさん待ったんだから」

 

すれ違っていても、何とかお互いを見つけて前を見て。お互いの思いを画面越しにすり合わせ、思いを高めていく。だからこそ、この作品は真っ直ぐな芯を持っており、故に面白いと言えるのである。

 

今だからこそのラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

小悪魔少女は、画面の向こうでデレている (GA文庫) | 只木ミロ, 林けゐ |本 | 通販 | Amazon