読書感想:幾億もの剣戟が黎明を告げる1 無敗の剣士と夜を斬る少女

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 さて、魔法が普通に存在している世界の中で剣の腕のみで戦い抜いていく、という状況は時々見かけるものであるが、画面の前の読者の皆様はそういった作品はお好きであろうか。 その好みは人それぞれであるので何とも言えぬが、そのような戦い方、というのは確かに一種の格好良さというものがあるのも確かである。

 

 

かつて、魔族を統べる魔王と呼ばれる存在により世界から太陽や星と言った灯が閉ざされ世界が夜で統一された世界がこの作品における世界である。夜において力を更に増加させる魔族達によりどんどんと追い込まれた人間達は、魔力を持った武器に変化できる人間、「偽紅鏡」とその武器と己の持つ魔力を持つ人間、「導燈者」と呼ばれる二人組からなる「領域守護者」を中心とし反撃に転じ。模擬太陽を備える城塞都市という、僅かな生存圏を死守しながらも日々戦い抜いていた。

 

 そんな世界で十年、壁の外で人々を守りながら生き抜いてきた少年、ヤクモ(表紙左)。パートナーである義妹、アサヒ(表紙右)と共に戦い続けてきた彼はある日、最強の「領域守護者」の一人、ミヤビに目を付けられ。彼女との取引により、領域守護者を養成する学校へと入学する。

 

しかし、そこで待っていたのは忌避と差別の視点。それもその筈、ヤクモは元から魔力が少ない人種、「ヤマト民族」であり、アサヒもまた魔法を一つも身に着けておらぬ無能な「偽紅鏡」だったのである。

 

 だが、世界はすぐに驚嘆することになる。何故ならば、二人は生温い世界で生きてきただけでは決して身に着けられぬ力を身に着けているから。魔力を持たぬが磨き上げた剣術は己を裏切らぬ。死闘と鍛錬の果て、彼等は魔法にも負けぬ剣術の腕を身に着けていたのである。

 

入学早々、生意気な同期の訓練生の行動を咎め決闘を挑まれたかと思えば、己達の力の一端を見せつけ圧倒し。壁外の訓練へと出向き先輩たちへとその力を見せつけ。

 

だが、彼等の力を以てしても容易には届くことはならぬ強さの境地がある。訓練生同士の激突が繰り広げられる大会、二人へと見せつけられるのは最強にも等しき不可視の力。

 

「僕だって、魔法を使えない無能だよ」

 

 だけど、それでも。負けられないという思いがある。勝利を信じてくれる人達がいる。そして傍らには、自分を信じてくれる相棒がいる。もう二度と折れぬという不屈の誓い、その力は新たなる力を生む鍵となる。

 

「僕と一緒に、夜を斬ってくれるかな」

 

だが、その覚醒は始まりに過ぎぬ。夜を取り戻す為の幾億の剣戟、その始まりの一太刀に過ぎぬ。だからこそ、ここからが本当の始まりなのである。

 

王道ど真ん中の熱さ迸るこの作品、真っ直ぐに熱い作品が読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

幾億もの剣戟が黎明を告げる 1 無敗の剣士と夜を斬る少女 (オーバーラップ文庫) | 御鷹穂積, 野崎つばた |本 | 通販 | Amazon