さて、時にファンタジー系の作品においては獣人やエルフといった、所謂「亜人」とも呼ばれる種族の者達が登場する事が多いが。例えば猫系の獣人であっても、ほぼ猫が人間になったような感じだったり、ほぼネコミミと尻尾が生えた人間のようだったり、と作品によってさまざまに違いがあるであろう。と、まぁどちらの見た目が好きか、というのは読者の皆様個々の好みにもよるだろうが。ここで何が言いたいのか、というと。亜人と人間は、基本的に共存している事の方が多いのではないか、という事である。
無論、異種族として嫌悪の目で見られていたり、差別されている事もある。しかし私の観測範囲の中であれば、その例の方が少ない、気はする。この作品はそんな少ない方の作品、亜人たちが「希少種」と呼ばれ排斥される世界なのだ。
空気中に滞留する魔力を肉体に取り込み、魔力を回復させ魔法を放つ、という方式である物語の舞台となる異世界。この世界では物語開始前、少し前に空気中の魔力が変質してしまうと言う世界レベルの災厄が起きて。それまでは亜人たち希少種の方が魔法では有利であったが、今は回復速度の差で人間が有利であり。「希少種」は奴隷として狩られ、排斥され。その生息域を少しずつ削られていたのである。
「エサです」
そんな「希少種」達が復権する為に必要なのは旗頭、そして無限の魔力を持つと言われる「無休の箱」と呼ばれる伝説の存在。 旗頭となるのは妖狐族の姫であるマイヒメ(表紙左上)。そして吸血鬼であるリリティア(表紙右)により召喚されたのが、主人公であるヒグレ。平凡で退屈な日常に飽きていた彼はある日、異世界に呼ばれる。魔力供給源の餌として。
(ま、いっか。どうにかなるか)
自分に求められている役目は供給役のみ、何か特別な力がある訳でもない。そんな状況にちょっと凹んだりしつつも切り替えて。異世界を満喫する事に。
しかし「希少種」と暮らすと言う事は、人類種と敵対すると言う事。敵として襲い来るのは、竜の力を取り込んだ騎士、ルルンを始めとした実力者である騎士たち。必死に闘うも、一瞬のスキを突かれ、拠点を特定されてしまい。皆を生かす為、マイヒメが敢えて囚われの身となってしまう。
「この世界に来た時に決めたんだ―――しんどい時こそ、前向きに」
処刑を前に、諦めるのか? 否、今までなら動けなかった。だけど今こそ、己が変わるチャンス。メンタルだけでも真っ直ぐに、何とかなると虚勢を張ってでも、前向きに。エルフの情報屋、ミスティ(表紙手前)に姉弟の誓いをお願いされて協力してもらう為に受け入れて。 三人だけでの奪還作戦が密かに幕を開ける。
「楽しく生きるには、理不尽に抗う力が必要だよな」
立ち塞がるのはルルン、圧倒的な強者を前に発現するのは、「無休の箱」の本質。無尽蔵の魔力、その影に隠された誰かの願いを叶え、戦いの為の魔法に変える力。抗う為の白き光が輝く時、戦いはひっくり返されるのだ。
甘々であり、熱めな戦いも見所であるこの作品。 甘くて熱い作品を見てみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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