読書感想:お姉ちゃんといっしょに異世界を支配して幸せな家庭を築きましょ?

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 さて、この本の感想を書いていく前に、私は一つ、画面の前の読者の皆様に謝罪しなければいけない事がある。それは、この作品は私では面白さを言語化する事は中々に難しいと言う事である。なので私の力を賭し出来る限りの言語化を目指していく次第であるが、どうしてもうまく分からなかったと言う読者様は是非にこの作品を購入し、自身の目で確かめてほしい次第である。

 

 

ではここからいよいよ言語化を始めていく次第であるが、書いていく前に一つ確かめておきたい前提条件がある。それは、実のきょうだい同士での結婚は不可能と言う事である。無論、それは当たり前の事実。近親なんたらなんて呼ばれる、禁忌である。

 

 ではそんな事実を覆すにはどうすれば良いのだろうか? 政治のトップになり法的に覆す、という手もあるのかもしれない。しかしこの作品ではそんなまだるっこしい方法は取られてはいない。寧ろもっと簡単、と言ってもいいのかもしれない手段が取られているのである。

 

四年前にバス事故で亡くした姉を想う、想い過ぎるあまりに他人の評価なんて気にしない少年、野分(表紙左)。ある日彼は、自分を迎えに来た「恋人」の訪問を受ける。

 

 だがしかし、ふと野分は気付く。自分に恋人なんていない筈だ、と。その事実を指摘し、「恋人」が明かす衝撃の事実。自分は異世界から来た「使者」であり、異世界の一部地域の支配者となっている野分の姉、葉桜(表紙右)の命で野分を連れに来たのだ、と。

 

異世界を構成する八つの都市の一つ、若者達の学び舎を支配し。実のきょうだい同士で結婚ができると言う法律を整備し、拒まれたり等の不測の事態に備え世界ごと拉致する準備を整え。

 

「なんで俺が譲らなきゃならないんだよ」

 

 しかし、野分はその手を思いっきり跳ね除け毅然と告げる。葉桜の事を想っているのは確か、しかし幸せになるのはこの世界でしか叶えたくないと。故に実は葉桜に対抗する勢力の一員であった「使者」の手を借り、彼は異世界からの使者を退け、葉桜をこの世界に取り戻す為の戦いを始める。

 

異世界からの使者、扱う「魔法」に対抗するのはこの世界に息づく「都市伝説」。

 

同級生の才色兼備な生徒会長、天束やSNSを使いこなす小学生、小織を巻き込み戦いを繰り広げ。

 

その中、それぞれの思いが巡る。誰かに、何かに巡る重すぎる思いがぶつかり合う。

 

「君がしたくなくても、私がしたいからする」

 

 その果て、遂に来た約束の日。世界が交わる混乱の中、そこで繰り広げられる景色とは。そこは是非、自身の目で見届けてほしい次第である。

 

正に怪作、それ以外に言いようがなく。何とも形容しがたい、とても混沌的な味が口の中に広がるこの作品。面白いのか、そうではないのか。それは体験しなければ、きっと分からないのかもしれない。

 

怪作を読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

お姉ちゃんといっしょに異世界を支配して幸せな家庭を築きましょ? (MF文庫J) | 雨井 呼音, みれあ |本 | 通販 | Amazon