読書感想:何と言われようとも、僕はただの宮廷司書です。

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様に一つお聞きしてみよう。画面の前の読者の皆様は、図書館はお好きであろうか。あの本の匂いに満ちた、独特の静寂感の支配する空間はお好きであろうか。皆様は、行ってみたい図書館はあられるであろうか。私は、一度だけ話で聞いた「ラノベの図書館」と呼ばれる図書館に行ってみたい。往年の懐かしい名作を、また読んでみたいと思う次第である。

 

 

では何故、いきなりこんな前振りになっているのかと言うと。この作品の舞台は図書館であるからである。

 

 しかし、この舞台となる図書館は、蔵書数一千万冊以上、地上ニ十階建てというとんでもない大規模に過ぎる図書館である。かの図書館が存在するのは、とある異世界の王国、スネイエルス。その王都に存在するのがこの図書館であり、かの図書館の司書をたった一人で務めるのがこの作品の主人公、セレル(表紙左)である。・・・普通に考えて、どう考えてもニ十階建ての図書館の管理なんて、一人ではできるものではないだろう。

 

「「ただの司書とは言えないわよ(です)」」

 

しかし、このセレルという青年、あまりにも規格外に過ぎる。幼馴染であるお転婆系な王女、フィオナ(表紙右)からも口を酸っぱくされながら指摘される通り、どう考えても普通の能力値ではない。

 

 そんな彼の強さは、一言でいうと最強系、ではない。寧ろ彼の凄さは万能系。自ら開発した魔術を用い、様々な手札を取れるが故に万能なのである。

 

魔法士の永遠のパートナーであり、九つの位階に分かれる魔導書。セレルの持つ魔導書の位階は下から四つ目。しかし、その能力の利便性と発展性を生かし。様々な魔術を用い、知識もまた多才。

 

そんな彼の元にフィオナを通して持ち込まれる、国王陛下の右腕たる公爵の愛娘、シオンの問題。彼女を蝕む、死に至る病

 

 その解呪、及び呪いを懸けた犯人を捜す中。セレルはシオンを取り巻く陰謀に接する事になり、その裏で糸を引いている黒幕の思惑へ立ち向かう事となる。

 

事態の果て、待ち受けているのはセレルも知らぬ魔導書の力。非道な手段を用い生み出された、闇に堕ちた魔導書の、暗黒にも過ぎる力。

 

敵の力は圧倒的に格上、対するこちらは満身創痍。こんな状況で勝ち目はあるのか。

 

「くれぐれも、この力のことはご内密に。でないと、大変なことになってしまいますからね」

 

 否、勝ち目は既に持っている。それはセレルが隠し持っている奥の手。おいそれと明かせぬ、明かしたのなら必殺を求められる。その手を切ったのならば、敵に勝ち目はなし。ただ、裁かれるのみ。

 

地に足の着いた、王道に丁寧な物語が繰り広げられるのがこの作品であり。真っ直ぐに面白いのである、故に。

 

王道的ファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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