読書感想:不死王の息子1

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 さて、もし画面の前の読者の皆様は不老不死になられたら一体何をしてみたいであろうか。私は正直、継続的に収入を確保できる手段を確保してから、命続く限りにラノベの潮流を追い続けていきたいと思う次第である。それに限らず、折角時間は人よりも多くあるのだから、興味のままに新しい事に挑んでみてもいいかもしれない。しかし、よく考えてみると、不老不死、永遠にも近い時間があるという事は実は最終的にはつまらなくなるのではないだろうか。

 

 

過去の第一次世界大戦の二年後、人外と呼ばれる種族の者達に人権が認められ。今では全人口の三パーセントが人外であると統計が取られ、人狼や吸血鬼などの陣が否存在が普通に隣人として存在しているとある日本。その片隅で、中学校受験を控え勉学に励む少女、由紀子(表紙中央上)。

 

彼女の通う小学校に、ある日一人の転校生がやってくる。その名は不死男(表紙中央下)。世にも珍しい「不死王」の血族であり、文字通り不死身の身体を持つ少年である。

 

そんな彼と関わり合いたくないと思うのも束の間、人外である食人鬼に級友と共に襲撃された事を切っ掛けに、瀕死の重傷を負い、その場に駆け付けた不死男に血を与えられると言う治療を受け、由紀子は結果として「不死王」の血族の一人、不死身の肉体を持つ事になってしまう。

 

 不死身となった事で分かる、自分が他の人と違う存在となってしまった事。不死身となる事で関わる事になる、エキセントリックに過ぎる不死男の家族達。そんな非常識に満ちたぶっ飛んだ日々が、由紀子のメンタルを鋼のように磨き上げ、鍛え上げていく。

 

本当に死神に愛されているんじゃないか、と言わんばかりに道を歩けば死にまくり、キラキラとしたエフェクトと共に再生する父親。父親をよく解体する、天然過ぎてぶっ飛んでいる母親。再生するには動物性たんぱく質が重要だからと、バター丸かじりやオリーブオイル一気飲みを勧めてくる不死男の兄姉達。

 

増加した身体能力に振り回され、爆増した食欲にきりきり舞いし。更には天然な不死男を始めとする不死王の血族たちのツッコミ役に回ったり。

 

ついでと言わんばかりに時々巻き込まれて死んで、普段は不死男が様々な状況で死にまくるのを見届けて。

 

「勝手に死なないで! こっちが迷惑」

 

 そんな日々の中、トドメと言わんばかりに不死王の血肉を狙う食人鬼達の襲撃に巻き込まれ。それでも、もう変わってしまった。関わってしまった。だからこそ逃げられぬ、故に不死男と二人で駆け抜けていく。

 

正に死亡フラグに満ちた退屈しない日々。血と臓物が舞い踊るスプラッタなギャグ、その裏で不死男を巡るシリアスが息をしているこの作品。気が付けば笑っているかもしれない。そんな何気ない面白さがある作品である。

 

クスリと笑えるギャグが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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