前巻感想はこちら↓
読書感想:「私と一緒に住むってどうかな?」 1 見た目ギャルな不器用美少女が俺と二人で暮らしたがる - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、DIYラブコメという恐らく何処にもないであろうジャンルを切り開いていく先導者となっているこの作品。前巻でこの作品の雰囲気は既に皆様、感じ取っていただけたはずだと信じている。では前巻を経ての今巻では一体どんな展開が待っているのだろうか?
「正直、計算外というか予定外だった」
「そうだねぇ。私も大丈夫だと思っていたんだけど、ちょっと油断したっていうか」
ゴールデンウィーク直前のある平日、劉生と扇奈の何気ない秘密の会話が、級友に伝わりまさか子供でもできたのかと誤解され、とんとん拍子で募金と署名準備が始まるような何気ない日々。
無論、二人の間に子供が出来た訳ではない。そもそもまだこの二人、付き合ってすらいないので。では一体何に悩んでいるのかと言うと、無論DIYの事である。
想定以上にボロボロだった、思い出の家。修理するところも改善点も山積みで、けれど材料もないしそれを調達するためのお金もない。
「お前さんたち、全然勉強不足だな」
更には、思い出の家のある山の持ち主である老人に思わず呆れられる程に知識もない。しかしそれもまた、仕方のない事である。一朝一夕にDIYが出来たら誰も苦労しないし、最初から専門的な知識がある人間なんていやしない。
それでも、あの家を残したいし手に入れたい理由がある。 やることは山積み、しかしまずは一歩ずつ。ある時は老人の孫娘、椋子の案内で裏山を探索し、食材にも材料にもなる竹を入手したり。またある時は、智也のアドバイスを受けて壁を塗るセメントを作ったり、耐熱煉瓦でかまどを作ったり。
正にDIY、前巻の助走を経て本格的に始まっていく更なる専門作業。そんな中、扇奈の心にある一つの変化が生じていく。
その変化の名は「許容」。今まで自分と劉生だけがいれば良かった彼女の世界に、少しでも他人がいてもいいスペースが生まれていく。
今までは名も覚えようとしなかったし近づこうともしなかった智也。そんな彼を邪険に拒まず、少しだけでも受け入れられた事もまた変化であり。
「数少ないぼっち仲間を、ほんの少し手助けしたいんだけど、力貸してくれる?」
「ああ、もちろん」
更には、自分と同じという共感を覚えていた奏が、学校で自分だけのスペースを追い出された時に力となり、彼女の望むものを自分と劉生のスペースに用意したり。それは正しく変化であり成長。喜ぶべき事。
「それだけじゃないのは自覚している。でも、それ以外が一体何なのか、マジで分からん」
そんな彼女の変化を一番近くで見守る劉生。彼の心もまた、徐々に変化の時を迎え始める。檻に閉じ込めカバーをかけた筈の思いが、自分を無視するなと声を上げだす。向き合えと言ってくる。その声が、カバーをどかし始め檻を壊し始めていく。
だからこそ、いつか求められるのだろう。隠してきた想いに向き合う事を。
確かに何かが本格的に始まり、更にラブコメとしての深度を増していく今巻。
前巻を楽しまれた読者様、やはりどこにもないラブコメを読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
「私と一緒に住むってどうかな?」 2 見た目ギャルな不器用美少女が俺と二人で暮らしたがる (HJ文庫) | 水口敬文, ろうか |本 | 通販 | Amazon