読書感想:10年ぶりに再会したクソガキは清純美少女JKに成長していた 2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:10年ぶりに再会したクソガキは清純美少女JKに成長していた1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻に引き続き今巻も舞台説明、本格的にラブコメを始める為の準備の巻であり、表紙の通り元クソガキ最後の一人、朝華について語られる訳であるが。画面の前の読者の皆様、こうは思われていないだろうか。未夜と眞昼は二人で一巻であったのに、何故彼女だけは一人で一巻、なのだろうかと。

 

 

それは彼女がメインヒロインだから、という訳ではない。元クソガキ三人がそれぞれメインヒロインなのである。ではどういう事か。それは、朝華の恋がとんでもないものだからであり、一巻まるまる費やさなければ書けないからと言えよう。前者二人が良なら朝華は重、二人が陽であるなら陰。正に毛色の違う恋を彼女は抱いている。その理由について触れていく訳なのである。

 

「勇にぃ」

 

静岡の方では、改めて距離感に悩む未夜が推理小説を切っ掛けに、また勇と話せるようになったり。眞昼が後輩たちに勇との仲を邪推されながら、自然な形で勇に密着したり。勇が車を手に入れたり、と着実に生活基盤を整え静岡に居ついていく中。神奈川の全寮制の女子校で。朝華はただ、惰性で生きていた。死んでいないから生きているだけ、周りに合わせて自分を取り繕いながら。満たされぬ毎日を送っていた。

 

一体、彼女に何が起きているのか? 彼女は十年前の記憶、「思い出」に縋って生きていた。認知症の祖父の介護に追われていた母親が漏らした一言が、母の面影を汚してしまって、「思い出」が汚されて何もせずとも変わっていく事を知ってしまった。だから彼女は自分を「思い出」の檻の中に閉じ込めて。子供の心を隠したまま、そのままに生きていたのである。

 

台風で突発的に発生したお泊り会、勇のアルバムの捜索。どれも皆大切な思い出ばかり。だからこそ、勇だけは失いたくない。そんな理由を付けて、誤魔化しながら会う事を拒んで。けれど勘違いした朝華の父、華吉が仕掛けたサプライズにより、朝華が滞在していた湘南の別荘に勇がいく事となり。不意に再会が訪れる。

 

思わず逃げ出した朝華と辿り着いたのは、サスペンスで出てきそうな断崖絶壁。自身の命を人質に取る朝華の語りで知る、彼女の思い。

 

「もう、勇にぃって呼んでくれないのか?」

 

だけど、思いは抑えきれない。そして「勇にぃ」の何気ない言葉が、思い出の面影と彼を重ね合わせる。変わらない彼がいると言う認識が、彼女の心の檻を開ける。

 

「あなたを、私の生きる目的にしてもいいですか?」

 

それは無論、良い事だ。だが同時に、とんでもない事だ。解き放たれた恋心が、思い出から脱却した依存心を勇へと向けて。彼女の生きる目的は勇となった。彼も気付かぬ間に、重すぎる心が彼に絡まったのだ。

 

本当にこの後、どうなるのだろう。一人だけ県外、というデバフが無ければすぐにでも勝負が決まっていたかもしれぬこの恋心。これから先、彼等がどんな終わりを迎えるにしても。朝華の恋、それは決着をつけるべきものとなるのだろう。

 

最後のクソガキが揃い、本当にラブコメが始まる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

10年ぶりに再会したクソガキは清純美少女JKに成長していた 2 (オーバーラップ文庫) | 館西夕木, ひげ猫 |本 | 通販 | Amazon