読書感想:飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか?2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか? - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の二巻刊行のお知らせが出た時、あるいは書店か専門店の本棚でこの表紙を見かけた時。画面の前の読者の皆様の中でこう思われた読者様もおられるかもしれない。一巻が完璧な起承転結で〆られていたのに、この二巻で果たして何を書くのか?、と。

 

 

 

だがしかし、画面の前の読者の皆様も安心していただきたい。今巻は決して蛇足なんかではない。寧ろここからの本当の始まり、再生の第二幕の始まりである。

 

「おかえりなさい、結城さん。今日も一日、お疲れさまでした」

 

その一言がどれだけ嬉しいか、その一言があるからどれだけ頑張る事が出来るのか。今まで勉強とバイトに明け暮れてばかりだった祐介に初めて出来た彼女、小鳥。前巻での毒親との対決を見事乗り切り、彼は今幸せの真っ只中にいた。家が隣同士なんて建前と言わんばかりの、同棲生活。愛する彼女との甘い生活は、祐介の日々の糧となり、更に彼を勢いづかせるきっかけとなっていく。

 

 転校生として祐介と同じ高校に転入した小鳥にも友達が出来、何もかもが順風満帆なある日。祐介と小鳥はひょんな事から、小鳥の家の隣に最近引っ越してきた少女、ユイと関りを持つ事になる。

 

家の鍵を無くし家に入れなかった彼女を保護し、一緒にご飯を食べ。何処か寂しげな彼女を放っておけず、いつでもおいでといい、徐々にユイも心を開き始め。時に一緒に遊んだり、三人でまるで家族のように並んで歩いたり。

 

 それは、ごっこ遊びだろうか。否。確かにそこにあるのはニセモノなのかもしれない。けれどそれでも、家族にも似た感情がそこにある。そんな新しい色を加えた日々の中、祐介と小鳥はユイに関わる問題へと立ち向かっていく事になる。

 

毒親ではない、けれど国内有数のゲーム会社の社長と言う立場故に、中々に娘との時間が取れず結果的に素っ気なくしている形となっている母親、ミナ。母親の思いを知ってか知らずしてか、自分の思いを押し殺し、良い子であろうとするユイ。

 

お互いを大切に思うが故にすれ違い、ミナの会社の海外進出を前にユイを託されそうになり。それが本当に正しい事なのか、自分達は関わっていいものなのかと思い悩み。

 

「それでも・・・・・・未熟でも未熟なりに、通したいものはある」

 

 だけど、未熟だとしても。それでも通したい己の中の筋がある。自分達のように両親の事で悩んでほしくない、同じような思いを背負って欲しくはない。だからこそ、二人で母娘の間を奔走し、絆を繋ぎ留め繋ぎ直す。ユイはまだ間に合うからと、その背を押し母親の元へ送り出す。

 

「それでも保証なんかなくても俺は誓うよ、俺はずっとお前の側にいる。どこにもいかない。望むなら一日でも小鳥よりは長く生きてやる」

 

そして、一つの家族の再生を見つめ、失う痛みを思い出した小鳥に寄り添い口にしたのは永遠の誓い。 誰にも邪魔させぬ、保証なんてないけれど絶対に叶えるという決意。それは小鳥の心の傷を塞ぐ絆創膏となる。

 

まるで埋め合うように、二人で一つとなるかのように。傷を埋める傍からその傷跡を繋ぎ合い、どんどんと特別同士になっていく二人。

 

そんな、何処か優しくて温かい甘さが更に高まる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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