さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はずっと、心の中に残っている後悔、というものはあられるであろうか。こうしておけばよかった、こちらを選んでおけば良かった。後悔先に立たず、なんて言葉もあるけれど。それでも悔やんでも悔やみきれぬ、そんな後悔はあられるであろうか。
とある高校の一年生、趣味は読書。所属する部活は、ただ本を読むだけの「読書部」。日々、カップ麺を愛する気だるげな同級生、薫と共に何気ない部活動と言う名を借りた何でもない時間を過ごすだけ。そんな日々を過ごす少年、結弦。彼には一つ、未だに心に残り続ける過去があった。
その後悔の主、その名は藍衣(表紙)。中学時代の元カノであり、まるで気紛れな子猫のように自由気ままだった彼女と心を通わせるも受け止めきれず、結局別れる事になってしまった、という過去である。
その恋は、一時の恋だったはずだった。いつか過去に埋もれ、思い出さなくなっていくはずの恋、の筈だった。
だがしかし。彼女は彼が通う高校に転校生として現れた。まるで導かれるかのように、彼の元に現れ、運命のように再び邂逅した。
そして彼女は、過去を抱えながらも結弦の元へと帰ってくる。
「でも、素敵だね」
幽霊部員の吹き溜まりでしかない読書部の部室に見学に訪れ、嵐のように結弦と薫をかき乱し。
「休日だし、結弦と遊びたいなと思って!」
かと思えば、休日にまで彼の家に押しかけ、その日常を侵食し。
彼女の心、その根底にあるのは何か。それは「恋」。あの日と変わらぬ結弦への恋心。
「結弦は見つけてくれた。私のこと」
昔から自分のやりたいことだけやって生きてきた。そのせいで奇異の目で見られ、遠巻きにされてもいた。だけど彼だけは、色眼鏡抜きで見てくれた。自分に心のままに歩み寄ってきてくれた。だからこそ、自分は彼に捕まってしまった。そう言い、彼女はもう一度、と彼の元へと回帰するかのように歩み寄ってくる。
その手を拒み、距離は離れ。果たして何が悪かったのか、どうすれば良かったのか。
「なんで、なんで・・・・・・駄々こねなかったんだよ!」
その答えは、過去を明かした薫の悲痛な叫びに導かれる。どちらかの輝きに合わせる、それだけでは只の押し付け。大切なのは、話し合う事。きちんと擦り合わせ、輝きを新たに共有していくという事。
やっと分かったその答え。その答えを以て向き合うべきは只一人。あの日とは違う。もう逃げてはいけない。
「・・・・・・うん。またやり直そう・・・・・・最初から」
「大好きだから、好きになって?」
もう一度初めから。今度は分かって貰えているという認識を捨てて、何でも分かり合って。そして必要だと思えたら、今度こそもう一度。導き出したその答え、それは何よりも尊くて。
そう、結局どこまでいっても、既に二人の心にはお互いが根付いている。切ったと思っても、切れない縁がある。捨てたと思っても、燻っていた互いへの思いがある。だから、きっとこの結果は必然なのだ。
まさに「光」。等身大で、時に自分自身の感情にすら振り回されて。けれど、何処までも自分の心に忠実で。そんな二人のやり直しラブコメであり、一つずつ後悔を越え、積み重ねていくものがあるからこそ。この作品は面白い、そう言いたい。
等身大のラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。