読書感想:隣の席のヤンキー清水さんが髪を黒く染めてきた

 

 さて、ヤンキーが髪を黒髪にすると、更生したというイメージを抱かれる読者様も多いかもしれない。しかしふと思うのだが、何故そういったイメージがあるのだろうか。ヤンキー=金髪、というイメージが基本であるからかもしれぬが、正直黒髪のヤンキーも探せばいると思うのだが。と、いう訳でこの作品はヤンキーなヒロイン、圭(表紙)がメインを張るラブコメなのである。

 

 

しかし表紙から見る彼女は黒髪である。一見するとヤンキーには見えぬかもしれない。何故彼女は黒髪なのか。それには理由があるのである。

 

「それなら清楚な子が好みかな」

 

部活は帰宅部、純粋で優しい、ということ以外は特筆すべき所なし。ごく普通の少年、大輝はサッカー部所属の友人、俊也に恋バナを持ち掛けられ、いきなりの直球な質問に何気なく好みのタイプを答え。

 

「どうして急に染めたの?」

 

 その翌日、隣の席の学校中から恐れられるヤンキー、圭の髪色は何故か黒に染まっていた。その理由を何気なく聞こうとして見ても、煮え切らぬ表情ではぐらかされ。だが変化はそこで止まらず、俊也と恋バナを積み重ねるごとに圭はどんどんと変化していくのである。

 

スケッチの授業でペアを組むことになったかと思えば、彼に見つめられて何故か赤面し。一緒に料理したいと言う夢を語れば、いつもは出てこない調理実習の授業に姿を現し。弁当を貰ってみたいという理想を語れば、何故か猛練習の果てに作ってきた手作り弁当を差し出して来て。謎の変化の様子に戸惑うも、純粋に心から喜んで。気が付けば圭と過ごす時間は増えて来て、一緒に居る事も増えていく。

 

「清水さんって少し分かりにくいけど優しい人だと思うんだよね」

 

何故圭は、彼に惚れる事となったのか。彼女の姉であり生徒会副会長である愛が聞きだしたのは、二人の共通の部分である中学校時代の出来事。マイペースで何処か天然だけど、ヤンキーと恐れられる自分を彼だけは、色眼鏡を掛けずに見ていてくれた。少しずつ彼の事が気になって、特別になっていく。一歩ずつ段階を踏んで恋をしていく、王道でロマンあふれる恋のステップを踏んでいたのだ。

 

「清水さんがもし傷つくことがあったら絶対後悔すると思う」

 

そしてまた、あの日のように助けられて。デジャヴのような状況と、圭の過去の一端の告白に大輝もまた、過去の一部を思い出す。実は同じ中学であったという事実を思い出す、だがまだ彼女の思いには気づかないのである。

 

心がまるで弾むような、仄かに香る真っ直ぐな恋をしているこの作品。ラブコメに心擽られたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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