読書感想:友達のお姉さんと陰キャが恋をするとどうなるのか?

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 さて、友人の姉、という存在の概念を聞いて画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。友人の姉、それ即ち良くて顔見知り、程度の関係性なのかもしれない。年の差にもよるかもしれないが、往々にして合わない、そんな存在と言っても過言ではないかもしれない。

 

 

では、もしそんな友人の姉と元々ある程度の顔見知り出会ったのなら。そしてそんな存在がヒロインであったのならどうなるのか。そこに焦点を当てて描いたのがこの作品であり、youtubeに源流を発する作品なのである。

 

自称陰キャ、ごく普通。自己肯定感が割と低めの少年、レイジ。好きな時間は幼馴染であり親友の陽キャラ、アヤトと遊ぶ時間。

 

 そんな彼には一つ悩みがあった。それは、レイジの姉である大学生、サクヤ(表紙)に何故か嫌われているらしいという事である。

 

「ちょっと! なに帰ろうとしてんのよ!」

 

アヤトがいなくて帰ろうと思ったら、何故か胸を強調する服を着たサクヤに家に連れ込まれ、勝手に自分の飲み物を飲まれたり。かと思えば、何故か激辛ナポリタンを食べさせられたり。更には風呂に水着で乱入されたり。

 

「レイジ、おまえやっぱり、まだ気づいてないのか?」

 

どう考えても、苛めに近そうなグレーゾーンなスキンシップ。その裏に隠れている想いとは何か? ・・・上記の台詞と表紙でもうお察しの方の方が多いであろう。そう、それは「好き」という感情。何を隠そう、サクヤは昔からレイジの事が大好きだったのである。

 

その割にはアプローチの仕方が小学生的すぎないか? とツッコミたくなった読者の皆様、どうかこらえていただきたい。私もツッコミたいのを我慢しているので。

 

 

アプローチを手伝うアヤトも思わず呆れるほどに面倒で。けれど二人の関係は、ゲーム勝負で負けた罰ゲームでサクヤが自分と付き合う事を要求したときに、確かに変わり出す。

 

 そう、この瞬間、確かに何かが変わり出す。戸惑い半分、畏れ半分。そんな思いで付き合いだした中、レイジはサクヤの事を知り始め、サクヤはレイジの隠された一面を知り、更に惚れ直していく。

 

実は、ジムの人達も驚くほどに腕っぷしが強かったり。飛び入り参加したeスポーツの大会で破天荒な戦闘スタイルで勝ってしまったり。能ある鷹は爪を隠すと言わんばかりに格好いい所を見せられ、更に深まる恋心。

 

怖い、畏れ多いと思っていた。けれど付き合ってみて初めて知った、彼女の大人っぽさの影に隠れた子供らしさと、大人になり切れぬぽんこつな所。

 

「俺、自覚できたんです。そしたら、ちゃんと伝えなきゃって」

 

 知っていくたび、心に生まれた波紋は心の水面を揺らし、心の奥底、はじまりの思いを吊り上げる。それは彼もまた、彼女が好きであったのだと言う想い。なれば後は改めて伝えるだけ。だからこそ、周りを巻き込んだ一世一代の大舞台で、想いを言葉に。

 

思わずやれやれと苦笑いしてしまいたくなるほどに遠回り。けれど、ぎこちなくも響き合う想いは確かに甘く。

 

そんな、相好を崩すかもしれない作品であり、確かに裏打ちされた甘さが光っている作品である。

 

甘めなラブコメが好きな読者の皆様、漫画エンジェルネコオカさんのファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

友達のお姉さんと陰キャが恋をするとどうなるのか? (ダッシュエックス文庫) | おかゆ まさき, まめぇ, 長部 トム |本 | 通販 | Amazon