読書感想:俺は知らないうちに学校一の美少女を口説いていたらしい1 ~バイト先の相談相手に俺の想い人の話をすると彼女はなぜか照れ始める~

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は変装した他人の正体を見破る事は得意な方であろうか。私はちょっと難しいかもしれない。ではもし、自分の想い人が変装しているとしたら、貴方はどうされるであろうか。

 

 

特に特徴もなく、しいて言うなら読書が趣味な少年、湊。彼は今、非常に困っていた。それは何故か。理由は両親の突然の海外転勤により一人暮らしとなり、調子に乗って本を買い過ぎてしまったため金欠だったのである。そんな彼は、高校中の多数の女子からモテる親友、和樹に提案を受け、学校側にバレないように変装してバイトをする事になる。

 

 元来素材がいいからか、イメチェンの如きレベルで変装が上手くいき、とあるお店にもバイトとして採用された彼は、指導役として柊玲奈(表紙右)という女性と出会う。

 

それとほぼ同時、彼は落とした学生証を届けた事が切っ掛けで、学校でも大人気の美少女、斎藤玲奈(表紙左)とも知り合う事となる。

 

「・・・・・・じゃあ、一つ相談にのってもらえますか?」

 

先輩である柊玲奈から齎された一つの相談。それこそがこの作品を始める切っ掛け。相談された事から、全てが始まっていくのだ。二人の関係も、何もかも。

 

本が好きと言う共通の趣味の発覚から、何処か斎藤玲奈の事が気になり出して。だけどどう距離を詰めていいか分からない湊は、先輩である柊玲奈へと相談し。

 

それを聞き、何故か照れたりしながらも。玲奈もまた、男子についてのあれこれを湊に質問するようになっていく。

 

 はい、ここまで読まれた読者様、聡い皆様であればもうお気づきであろう。この二人、同一人物である。湊は言わば、想い人へ近づく為の方法を想い人自身にしてしまう形になっているのである。

 

いい加減気付けやとツッコミたい読者の皆様、少しだけ待っていただきたい。実際、私自身もツッコミたい。だが、これこそがこの二人のラブコメに必要なものであり、二人だけのラブコメの形なのである。

 

肩書なんかで見られる事に疲れ、周囲の男子とは距離を取り心を凍らせ。けれど、彼は何処か違った。最初は変な人だった、けれど何も関係なく、自分を自分自身として見てくれた。不思議な人だと思うばかりだった、けれど彼は、彼だけは。色眼鏡もなく自分だけを見てくれるからこそ彼は、自分が欲しいものを欲しい時に与えてくれたのだ。

 

「そんなことはしませんよ。・・・・・・知らない人のは怖いので遠慮させて貰っていますが、あなたは・・・・・・少しだけ特別な友人なので」

 

 特別な友人、それは確か。けれど、もっと先が欲しくなる。彼と話すだけで心が嬉しくなる。この想いは何か。もう認めるしかないだろう、これこそが「恋」だ。

 

バイト先と学校で積み重ね、積み重ね。何でもない時間を重ね、二つの場所で心近づけ。二つの顔の狭間、玲奈の変わりゆく、動く、動く心を描きながら。真っ直ぐに優しい、湊のただ一人の為の思いを描いていく。

 

 だからこそ認めたい、ハッピーバースデイと祝福の言葉をこの作品に捧げたい。この作品はラブコメとして完璧である。真っ直ぐに初々しく、もどかしくてこそばゆく。そんな青春だからこその変わりゆく気持ちを丁寧に描いているからこそ、この作品は直球ど真ん中に面白いのである。

 

二巻も既に決定している、それもまた納得できるこの作品。

 

王道ど真ん中のラブコメが読みたい読者様、全てのラブコメ好きの読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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