読書感想:ギルド最強VSクールな受付嬢 あなたを攻略できるクエストはありますか?

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は自分の好きな理想の主人公像、というのはどんなものであろうか。何処か中性的な美少年だろうか、それともガタイの良い男らしさあふれる人物だろうか、はたまたイケメンだろうか。その答えには千差万別があるであろうが、古来より物語の主人公には「一途さ」、というものが求められるというのはあるのかもしれない。

 

 

それもまた当たり前かもしれない。現実でも移り気のある浮気性な男性と言うのは嫌われる事が多い。だからこそ男は一途であるべきである、と言えよう。実際問題、現実で浮気をすると場合によっては慰謝料その他諸々の面倒な事象が発生するので。

 

「あなたを攻略できるクエストはありますか?」

 

「発情期のオークの討伐などいかがでしょう?」

 

 そういう意味においてはこの作品の主人公、「不屈の魔拳士」との異名を持つレイジ(表紙左)はこれ以上ない程に一途である。それはいっそ変態なほどに。彼がそれほどまでに熱を上げているお相手、それはギルドの受付嬢であるアリサ(表紙右)である。

 

日々あれこれ手を変え品を変え、全て直球ど真ん中勝負。そんなレイジのアプローチをすげなく躱し、それでも諦めずにレイジは今日も依頼に赴く。「始まりの街」と呼ばれる街、アヴァンセにいつまでも留まりながら。魔法学院の主席として卒業しながらも何故、彼はそこまでするのか。

 

 それは彼が五年前、冒険者時代のアリサに魔法を習った時に一目ぼれしたから。だがアリサはそれを受けるわけにはいかなかった。その理由は、彼女の心は今も尚、復讐に囚われているから。魔王軍幹部の狼魔人に仲間を殺され、その復讐に囚われているから。

 

だから自分は汚れている、レイジに思われるには相応しくないと嘯き引き離そうとする。だがレイジは離れない。押しかけ弟子となった魔術師の少女、フィナを鍛えながら彼女へのアプローチを怠らない。何処までも真っ直ぐに、何処までも純粋に。幾ら折れようとも諦めぬ愛が少しずつ、アリサの心の壁を壊していく。少しずつ、彼へと思いが向いていく。

 

その彼女の前、祭りの場を荒そうと現れる狼魔人。過去の因縁に血の気が上り、アリサは一人戦おうとする。

 

「過去を未来に背負わせてください」

 

 だけど、その前に立ち塞がる影がある。それは勿論レイジである。アリサから教わりフィナへと伝えた教えを胸に。彼女の事を守る為に。成長を見せた彼の背に、彼女の思いはようやく素直の発露を迎える。

 

オーダーは一つ、全員で生き延びる事。簡単な事だ。通じ合った想いがあるなら負けはしない。死ななければ負けじゃない。全員の力を合わせ乾坤一擲、正に捨て身の策で勝機を引き寄せ。

 

「レイジさんは・・・・・・何を望んでくれますか?」

 

「俺のお嫁さんになってください」

 

 全てが終わったその先、ようやく自分を許す事が出来たアリサはレイジと結ばれる。その瞬間、今度は彼女のクエストが始まるのだ。 何もしてあげられていない分、それ以上を取り戻す為の「レイジを攻略するクエスト」が。

 

王道直球な熱さと爽快感の中に、打てば響くようなラブコメがあるこの作品。正に面白い。一途だからこその安心感もあり、とても良いものである。

 

爽快感のあるラブコメを読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ギルド最強VSクールな受付嬢 あなたを攻略できるクエストはありますか? (ファンタジア文庫) | 木の芽, そらしま |本 | 通販 | Amazon