読書感想:裏社会最強の男、終末異世界を愉しむ。 終幕に捧ぐ反逆転劇

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はデスゲームと聞くと何を連想されるであろうか。例えばダンガンロンパシリーズだろうか、はたまた別のゲームだろうか。そして貴方はデスゲームと聞くと浮かび上がる感情は恐怖であろうか、嫌悪であろうか。それとも、興奮であろうか。

 

雇い主という名の主人の愛娘、塔子(表紙右)の警護任務を引き受けさせられ、日ごろのお世話まで完璧にこなすごく普通の高校生、凌真(表紙左)。

 

 では彼は唯の普通の高校生であるか、否、勿論そんな事は無い。彼の正体、それは「調整者」。そう呼ばれ、「殺し屋殺し」を成し遂げる事で裏社会の秩序を守る特殊な殺し屋である。

 

付き人と殺し屋、二つの仕事をこなしながら消化されていく平凡な日々。それがずっと続くはずだと思っていた。

 

 だがしかし、何事もなかったはずの日々はある日、唐突に崩れ去る。何故ならば凌真や塔子達を含む多数の人間が突然、異世界へと拉致されてしまったからである。

 

かの異世界の名は<エンドベイル>。かつて<エバーグレイス>と呼ばれたけれど、別の世界から訪れた異邦人、<魔族>により侵略され征服され名を変えた世界。支配者たる魔族により人間達は家畜や玩具として使い潰される、最悪な終末世界。

 もうお分かりであろう。凌真や塔子達が何故この世界に拉致されたのか。その理由もまた使い潰す為。彼等は巻き込まれる、魔族のペットである魔物達に人間が襲われただ壊滅していくだけのゲーム、<惨酷なる匣庭>へと。

 

しかし、そんな中でも凌真は笑っていた。寧ろ楽し気に心を躍らせていた。

 

何故なら、彼にとって現実世界はなんの刺激も興奮もない、静謐で退屈な世界であったから。だがこの世界は刺激に満ちている。そして自分達よりも遥かに強大で、殺しても死なないような敵が沢山いたからである。

 

「―――俺が、魔王の世界を壊す」

 

全員の力を合わせぶち殺した魔族すらもチュートリアル的な存在、一つのゲームをクリアせどすぐに始まる新たな戦いへの誘い。

 

だが、それこそ彼の望むところ。あの日心奪われた彼女の願いに応える為、凌真は本当の意味で決意し次なる戦いへ進む。

 

ここより全てが本当の意味で始まるのだ。そしてここで本当に明らかとなる言葉の意味がある。

 

終幕に捧ぐ反逆転劇。この言葉の意味が分かった時、画面の前の読者の皆様も分かるだろう、彼がこの言葉に込めた大きな感情を。

 

人があっけなく死ぬ作品が好きな読者様、一本筋が通ったぶっ飛んだ主人公が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

裏社会最強の男、終末異世界を愉しむ。 終幕に捧ぐ反逆転劇 (MF文庫J) | 水城 水城, つくぐ |本 | 通販 | Amazon