読書感想:Re:RE-リ:アールイー- 1 転生者を殺す者

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし死んで転生するとしたらどんな世界が良いであろうか。もし転生して、誰かに迷惑をかけてしまうとしたら貴方はそれでも転生したいだろうか。

 

異世界転生、そう言われる作品には様々な転生のパターンが存在する。その中の一つに「異世界の住人の身体の中に、転生前の人格が唐突に目覚める」というパターンが存在すると言うのは、画面の前の読者の皆様の中にもご存じである方は多いだろう。あの転生方法も、考えようによっては誰かの人生を奪うという意味で迷惑をかけているのかもしれない。

 

 では、この作品における転生の仕方はどうかと聞かれると、それはもう迷惑の極みと言っても過言ではないのかもしれない。何故ならば、その転生方法は死者への冒涜に他ならぬからである。

 

過去に十三柱の神が降り立ち、五年前に神を信奉する者同士の大きな戦、「聖戦」が終わったばかりの大陸、レッドガルド。

 

神もなく希望となる英雄もいないこの世界を牛耳っていたのは、聖戦の後に異界より現れた来訪者、「転生者」と呼ばれる軍団であった。

 

魔法も存在せぬこの世界で、魔法が如き超常の力を振るい死をまき散らしながら何かを遂行しようとする転生者達。かの者達の転生方法、それがこのレッドガルドの人々の死体を乗っ取ると言う事。死体が原動力であるがゆえに、死したら飲み込まれ、更には幾ら殺そうとて身体を乗り換え生き残る。正に不死、天災が如き軍勢。

 

 かの軍勢に一人抗う、老境へと差し掛かりつつある一人の男がいた。彼の名はデイル(表紙左)。転生者達に故郷を追われ、大切な親友から預かっていた娘を殺され、その死体を取り返す為に戦い続ける男である。

 

「雲間からさした光が、神が送った勝利の兆しか、それともただの天候現象にすぎないのか―――試してみよう」

 

光なき世界で希望の光となるかのように。幾つもの名と顔を使い分け、英雄を演じ、民衆を悪意と憎悪で駆り立て戦いへと放り込む。

 

 頼れるものは己の肉体のみ、それももう限界が近く。それでもデイルは英雄として戦う。泥臭く、醜くとも必死に。幾度倒れようと尚、と言わんばかりに。

 

「俺の名は、アイギストス

 

それでも尚、攻め寄せる転生者達の軍勢。その先頭を走るは、かつての親友の身体を乗っ取った最強の転生者、ユージーン。その襲来を前に、デイルはかつての姿となりてまた背負う、復讐者、そしてかつての聖戦の英雄の名を。

 

 それは正に希望である。終わらぬ戦の中、人々がいとも簡単に死んでいく世界の中で復活した希望である。その背に憧れた少年がいた。彼の名はシド(表紙右)。デイルに助けられ同道するうちに、彼に憧れた少年である。

 

ずっと側でその戦いを見てきた。けれど彼には何の力もなかったはずだった。だがしかし、彼の中には戦いの中で受けた傷から最強の転生者が入り込んでいたのだ。

 

その者の名はレイ。全てを模倣するというスキルをアイギストスへと向けた時、全盛期の彼を模倣、否、受け継いだ新たなる英雄が生まれでる。

 

「お前の名はオレステス! その名の意味は、アイギストスを! 超える者!」

 

英雄の隣に新たなる英雄が並ぶ時、生まれるのは無双の力。全てを覆す、反撃の刃。

 

泥臭く熱く、終わらぬ戦いが身を焦がす。そんな圧倒的な大作感を叩きつけてくるファンタジーがこの作品であり、何処までも現実的で直球勝負だからこその面白さがあるのがこの作品である。

 

王道骨太ファンタジーが好きな読者様、終わらぬ戦いが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Re:RE-リ:アールイー- 1 転生者を殺す者 (オーバーラップ文庫) | 中島リュウ, ノキト |本 | 通販 | Amazon