読書感想:日和ちゃんのお願いは絶対

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方はもし願いで世界を自由に作り変える事が出来るのなら、どう世界を作り替えるだろうか。

 

そんな夢物語のような能力を持っているのが、この作品のヒロインである葉群日和(表紙)である。一見すれば彼女は普通の少女である。実際、彼女は大筋においては普通の少女である。

 

しかし、彼女の「お願い」は絶対に叶う。叶ってしまう。世界の流れを裏切ってでも、彼女の願いの通りに。

 

では彼女が願ったのは何か。自分に都合のいい世界か。

 

否。彼女が願ったのは只一つ、平和な世界、それだけである。しかし、そんな願いをかき消すかのように世界は優しくはない。

 

そもそも彼女と主人公、深春の住む世界は行き詰まっている。どう行き詰まっているのか。宇宙人が侵略してきている訳でもないし、戦争が起きている訳でもない。だがしかし、タイムリーな話題である新型ウイルスが流行しているように、今、読者である私達が実際に生きている世界よりも一歩進んで行き詰まっているのである。まるで真綿で首を絞めつけるかのように、徐々に世界は袋小路に追い込まれている。

 

そんな中、世界を何とかすべく暗躍しているのが日和が結果的に作り上げた組織、「天命評議会」である。世の裏で暗躍し、少しずつ世界を変えながら望みを叶える為に。

 

その首魁である日和が願ったのは何か。それは深春に恋人になってほしい、というささやかながらも年頃の女の子らしい願いだったのだ。

 

願いにより想いを誘導され、付き合う事になり非日常に巻き込まれていき。普通では絶対に味わえない、大国による襲撃すらも経験することになり。

 

だけどそんな中、幾度も歪められる世界の中でも育まれ変わらぬものがあった。それはお互いがお互いに向けて育んだ恋心だ。

 

巻き込みたくないと忘れさせられ、それでも心に刻まれていた想いが突き動かして。

 

「君が、好きなんだ」

 

「もうなにも忘れないでください」

 

それは、一蓮托生になる合言葉。二人で共にどこまでも、その先がどこだとしても。共に歩んでいくのだという誓いの言葉。

 

この作品はまごう事無きセカイ系の作品である。使い古され大切なものを見失ったセカイ系という枠組みの中に思い出せと言わんばかりに投げ込まれた噎せ返るほどの作品である。そして同時に、どうしても終われぬクソッタレな世界で、それでもと言わんばかりに手を繋ぐ二人の、純粋で真っ直ぐな恋のお話である。

 

不思議さを味わいたい読者様、ピュアなラブコメを読みたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。

 

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