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読書感想:日和ちゃんのお願いは絶対3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の最後で人が消え滅びゆく街で日和は深春に別れを告げ、「天命評議会」へと戻った訳であるが、そこから一体、この作品はどう展開していくのか、と思われた読者様もおられるのではないだろうか。その答えをここから語っていくわけであるが、やはりここから先、どうかお覚悟を頂きたい。きっとここから始まるのである、本当の終わりが。
日和とのお別れと言う深春にとっては重大な事件、しかしこの終わりかけた世界は終われない。壊れかけても、少しずつ綻びを始めていても。この世界は、まだ生きている。だからこそ終わらない。卜部の両親の他界による同居という少しの変化を経ながらも、日和のいない日常を過ごして数か月。
「久しぶりだね―――頃橋くん」
だがしかし、日和は帰ってきた。彼の目の前に再び現れた。そんな彼女は何を見てきたのか、今まで何をしていたのか。
「許容範囲内だね。安堂さん、進めてください」
彼女は彼の知らぬ間に、多くの命を見捨てる「お願い」を下していた。大国の長をも隷属させ、最低限の生活を守る為、自分から要らない機能を振り捨てて。まるで箍が外れたかのように、彼女はお願いを駆使して世界を奔走していた。
だが、世界の不条理も崩壊も、止められはしない。かつての経済大国すらも治安を無くした無法地帯へと陥り、最低限すらも叶えられず。深春達の知らぬ世界の不条理、それをずっと見つめていた。けれどそれでも願っていた、彼等がそんな不条理に触れずすむ事を。
そんな事態が世界で起きているとは露知らず、深春達はひょんな事から文化祭を街を巻き込み全体でやりたいという話が持ち上がり。大人達に交渉したり、方々から食材をかき集めたり、と全力を尽くしていく。
「あの約束・・・・・・今でも、守ってくれる?」
その最中、深春の心を揺らす日和の問いかけ。いつか「天命評議会」が無くなったら側にいてくれるという約束、それはまだ叶うのかという問いに、深春は自身の心に向き合っていく。
そんな中で始まる文化祭。皆で騒ぎ盛り上がる、穏やかで楽しい一時。だがそれはきっと、終わり往く世界の最後の輝きなのだろう。
日和は知ってしまった。世の中はもうどうにもならぬ事を。いつか運命を受け入れるしかなくなる日が来ることを。
「・・・・・・守りたいって、思うんだよ」
やっと見つけた自分の思いを告白する深春。もう一度重なる二人の心。
だが、それを飲み込む「終わり」が来る。天命評議会が予測した、有史以来最大の災害がすぐそばまで迫っている。
遂に始まる、世界の終わり。何もかもが終わる、そこで二人はどんな決断を選ぶのだろう。
独特の諦念と、対照的に儚くも眩しい日常の輝きに溢れる今巻。シリーズファンの皆様は是非。
一体、最後は世界はどうなってしまうのだろうか。