読書感想:今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。4 四度目の流れ星の日が来るからね

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前巻感想はこちら↓

読書感想:今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。3 3年分の「ありがとう」だよ、先輩 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様の中で、この作品のストーリー、今までなされてきた展開を覚えておいでの読者様はどれだけおられるだろうか。覚えていない、としても無理はないかもしれない。何故ならばこの作品、前巻が刊行されたのがちょうど一年前であり、後書きでも語られている通り、打ち切りの危機を乗り越えて、まるで「星の涙」が起こした奇跡のように、まるで不死鳥の如く舞い戻ってきた作品だからである。

 

 

では、そんな一年ぶりの新刊では一体、どんな事に触れていくのだろうか。実質的な最終巻となる今巻は、一体何を語るのか。

 

その答えは簡単。解決編を始めようという枕詞の通り、ほぼすべての謎に光を当てその真実を晒し。怒涛の如く回収し、最後まで駆け抜けていく巻なのである。

 

あの日救ったと思っていたはずだった少女、陽星。今まで登場した多くの登場人物があの日、始まりの日に同じ場所にいたと言う真実が判明しながら。謎の光に飲み込まれ、二人は七年前の七月七日へと時間移動し、七年前の伊織と流希と遭遇し、元の世界に戻る為の「鍵」を探し、奔走する事になる。

 

 過去の出来事を追体験し、過去の自分達と出会い、振り返り。それが時間を移動する鍵。そして、幾多の時間を振り返り、可能性の世界を巡る中。伊織は始まりの根源に迫り、今まで自分達が救ってきた少女達に背を押され、懸命に前へと進んでいく。

 

確かに今までの彼の行いは、本来の目的からすれば無駄な行いであったのかもしれない。けれど、彼の行いで確かに救われた者達だっている。彼が痛みを抱え込むことで、確かに救えた者達がいる。

 

「わたしがいない世界でも、みんなが強くあれますように」

 

見つけたのは自分自身が払った代償の真実、そして「彼女」が願った本当の願い。「星の涙」を裏技的な方法で騙し、願った只一つの願い。それは皆の幸せを願うからこその、彼女らしい願い。

 

 その想いが胸に届いた、宿った。だからこそ、もう大丈夫。「星の涙」はもういらない、近くに星なんてなくていい。天から見守っていてくれる限り、何処までだって歩いていける。

 

失ったものは数多く、取り戻せなかったものも多く、傷は未だ残るばかり。だけどそれでも、取り戻した願いが導いた未来の先、辿り着いた当たり前の、本来のあるべき光景が眩くて尊い

 

待たされた分、心に刺さる何かが訪れる今巻。

 

画面の前の読者の皆様も、是非読んでみてほしい次第である。

 

今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。4 四度目の流れ星の日が来るからね (MF文庫J) | 涼暮 皐, あやみ |本 | 通販 | Amazon