読書感想:僕らのセカイはフィクションで

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 さて、我々読者の住まう世界と例えばライトノベルの登場人物達が住まう世界は、勿論違う。というのは勿論画面の前の皆様もお分かりであろう。例えばライトノベルの登場人物達は、良き隣人であるが一番近くて一番遠い世界に住んでいる者達である、と言ってもいいのかもしれない。ではもし、そんな世界に生きる者達と実際に出会えるとしたら、画面の前の読者の皆様は一体、彼等とどんな事を話してみたいだろうか。

 

 

そんな前置きはともかく、今作品の感想をここから書いていこうと思うが、その前に一つご容赦願いたいことがある。この作品、どう感想を考えても面白さを語るうえで世界の根幹に触れるしかなく、故に面白さを丸裸にせぬ為、いつにも増して抽象的となるかもしれぬのを許していただきたい次第である。

 

 では一体、この作品はどういう作品なのか。それの答えはファンタジーとリアルが交じり合う異能バトル、と見せかけ己の存在の意味、世界の意味を問いかけてくる作品なのである。

 

普通の高校生、と見せかけ「学園事件解決人」という与えられた称号の通りに安楽椅子探偵も真っ青な勢いで学園内のトラブルを解決して回る少年、文士(表紙右)。

 

だがしかし、彼は今煮詰まっていた。もう一つの裏の顔である、web小説作家。その代表作であり、解決した事件から得たアイデアを様々に詰め込み描かれた作品、「アポカリプス・メイデン」のネタが切れ未完結となりそうだったのである。

 

一体どうしたものか、とうんうんと頭を悩ます文士。そんな彼の目の前、駆け抜けていく一人の少女、その名をいろは(表紙左)。「アポカリプス・メイデン」のヒロイン。彼女を追っていたのは、自身が生み出した敵役の一人、「奇術師」。

 

 当然放っておくわけにもいかず、勇気を出して文士は、作者としての知識を用いる事で撃退に成功する。だが、彼の予想を覆す事態はすぐに巻き起こる。

 

自身が知らぬスキルを身に着けた、自身が創造した筈の敵。更には自分の知らぬ、創造もしていない敵。

 

 これは一体、どういう事なのか。その答えの多くを語るのは、この作品への礼儀に反してしまうだろうから私は敢えて語らない。

 

只一つ言えるのは、答えは既に画面の前の読者の皆様の前に晒されている、という事。

 

「そうすればきっと、世界は応えてくれる」

 

「最高のハッピーエンドだ」

 

もう一つ言える事、それはこの作品が難解であるという事。だが、その全てを感じ取り読み解けた時。全てを理解できた爽快感のある面白さが、味わえるという事である。

 

複雑な作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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