突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方は音楽は好きであろうか。お好きであれば、どんな音楽が好きであろうか。
この作品に集ったのはそんな音楽が好きな子供達である。そして、言葉に出来ぬ言葉を抱えながら、それを言葉の代わりに音楽で表現する事を選んだ子供達である。
この作品の主人公である真琴(表紙中央)。一見すると、彼は女の子に見えるかもしれない。しかし彼は男の子である。女装である。そして、彼が女装で歌の動画を上げた事からこの作品は始まっていく。
教師である美沙緒(表紙右端)にバレてしまい、こき使われる中で出会っていくのは、それぞれ未成熟だけど輝く音を秘めた少女達。
ひねた毒舌な天才、凛子(表紙左から二番目)はキーボードで。
華道をたしなむお姫様、詩月(表紙右から二番目)はドラムで。
不登校座敷童、朱音(表紙左端)はその声で。
そう、彼等は間違いなくこの世界で出会ったのである。凸凹でバラバラで、だけど一度噛み合えばピッタリと噛み合う彼等は出会い、共に歌を奏でるのである。
貴方はさよならピアノソナタという名作を知っておられるだろうか、かの杉井先生の名作を知っておられるだろうか。あの名作を軽く超えていく、そう言わんばかりにこの作品には噎せ返って溢れかえるほどに歌と音楽が詰め込まれている。
そして同時に、火傷しそうなほどに熱くて真っ直ぐに純粋で瑞々しい、青春の疾走が込められている。それこそこれこそが杉井光の真骨頂、集大成だと言わんばかりに。
地平線で歌が尽きる。
そこへ辿り着く、そこまでに圧倒的な筆致で繰り広げられる歌は、まるで撃ち込まれる弾丸のように。そして私達読者の心へ届けと飛んでくる渡り鳥のように。
どうか画面の前の読者の皆様、何も言わず何も聞かず読んでみてほしい。それが私の唯一の願いである。貴方はきっと撃ち抜かれ揺さぶられる。その先に満足がきっと待っているはずだから。