許嫁、それは今の世の中で終ぞ聞かぬ古き言葉。では物語に落とし込むならヒロイン確定に見えて、時に負けフラグとなるその概念を物語に落とし込めばどうなるのか。
はい、いきなり何を言い出すんだと思われた画面の前の読者の方々申し訳ございませんのでどうかブラウザバックはお止めください。上記の語りは決して唐突なものではなく、この作品には元許嫁のヒロインが登場するからである。
舞台は新しい何かが始まる春、四月。とある都会の高校で主人公である七渡(表紙左、見切れている)と彼を追いかけて九州の田舎町からやってきた元許嫁であるヒロイン、翼(表紙)が再会する所からこの作品は始まる。
そう、元、許嫁である。では何故元なのか?
それは七渡と翼が親同士が決めた許嫁でありながら、七渡の親の離婚により離れ離れとなり、引っ越した事により関係が自然消滅したと思われていたからである。
だがしかし、翼は決して諦めていなかった。好きと言う想いを持ち続け、彼にいつか再会したいと必死に頑張っていたのである。
ここで止まっていればこの作品は元許嫁同士のラブコメとなっていたかもしれない。しかしそうはならない、では何故か? それは今、七渡の隣に親友である都会のギャル、麗奈がいるからである。
翼には確かに幼き頃、積み重ねてきた時間がある。だがしかし、麗奈には翼にはない、中学時代の時間という積み重ねてきた時間がある。そして彼女も彼の事が大好きなのである。
そんな二人が出会ってしまったのならどうなるのか。言わなくても分かるだろう、戦争である。
そして二人が仕掛けるのがピュアきら(※)でぐいピュア(※)な恋の仕掛け合いである。では二人の恋心とは一体どんなものか。
翼の恋は、例えるならばまるで宝石のように輝く、まるで星のように輝く海溝のように深い恋心である。積み重ねてきた時間がある、これからも時間を重ねていきたい、だからこそ恥ずかしくても一生懸命、七渡へとアプローチを繰り返す。
「ウチはね、七渡君と今でも許嫁だと思っているから」
今すぐでなくともいい、だけどいつか私に振り向いてほしい、そう言わんばかりに。
では麗奈の恋は果たしてどういう恋なのか?参考となるのは、カクヨムで連載されているこちらの前日譚である。↓
こちらの前日譚を読んでもらえれば分かる通り、彼女は七渡という光に救われた少女である。そんな彼女の恋は、依存という言葉が示すようにどこか危うくてだけど一途な、山のように高くてマグマのようにドロドロと燃え盛る恋である。
諦めきれぬ、元許嫁がなんだ貴方がいない間にここは私の場所なんだ。そう言わんばかりに彼女は翼へと主張し、親友と言う武器を振りかざして七渡へと迫る。
そう、正に修羅場、正に三角関係。なやまし修羅場スクランブルと言わんばかりに三人の想いがまるで解けぬ糸のように幾重にも絡まり合う、恋のさや当てが止まらないラブコメなのだ。
同時にこの作品は青春である。高校一年生という一度限りの時間を、少しでも何かが変われば壊れてしまいそうな関係を築きながらも、それでも同じ時間を共に過ごす眩いまでの青春なのである。
だからこそ私は声を大にして言いたい。昨今のスニーカー文庫の一巻切りなんかにこの作品は負けるべきではないと。この作品は、今のこのラノベ界に生まれるべき作品であり、易々と失われてはいけない作品であると。
嘘だと思うのならば、どうかこの作品を読んでみてもらいたい。彼女と彼女の恋を見てみてほしい。きっと私の気持が分かっていただけると信じたい。
全国のラブコメ好きな画面の前の読者の皆様は是非。読んで損はない、頼りないかもしれないが私は太鼓判を押すので。
※・・・造語。詳しくは作者様のtwitterを調べてみてほしい。