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読書感想：あなたを諦めきれない元許嫁じゃダメですか?3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この巻の感想を書いていく前に予め画面の前の読者の皆様に謝罪いたしたい。今の私はこの巻を読み、心の中に感情の嵐が駆け巡っている状態であり、この嵐をそのまま文章にしていきたいので読みにくいかもしれない。そしてネタバレしないという事を放棄する勢いで書いていくので、画面の前の読者の皆様の中でネタバレが嫌だと言う読者様は是非、今の内にブラウザバックして、読了してからこの巻の感想を見に来て欲しい次第である。
ではここからは、前述の注意を読んでいただけたものとして語っていきたい。最初に言ってしまおう、この巻は最終巻である。全ての恋の因果が一点に収束し、一つの答えを出す巻である。
「次は大切なものを失わないように、みんなにとってではなく自分にとって正しい道を選択した方がいい」
そう一樹に七渡が諭されたように、彼もまた一人を選ぶ事を求められる。当然であろう。誰をも選ぶという選択肢は何処にもなく、ありえない。誰かの涙の上、そこにこそ自分にとっての幸せはある。
そして想いに揺れる七渡が自身の思いを見つめ直す中、翼、麗奈、そして育美の想いもまた最後の激突を始める。あの日育美によって巻き起こされた波紋のまま、もう絶対に譲れない。だからこそ、ぶつかり合う。
「そうですね。でも、仮に何かあっても私は絶対に七渡君を諦めることはないので」
翼が七渡と育美のバイト先へと転職し、育美と翼が二人きり。火花散る修羅場の中、育美の突き刺すような刃へ翼は絶対的な覚悟と使命が如き愛を見せ、けん制したり。
「・・・・・・その関係性って、色々と利用できる価値があると思わないかしら？」
相談があると育美が七渡を呼び出し、悪魔との契約的な相談をしたり。
思いが巡り、火花が散り。その脇で柚癒の恋の終焉等、脇道の因果は一足お先に収束し。七渡を巡る恋模様は、文化祭にて収束し、一つの思いが終わりを告げる。
「今からあなたに大事な話をする。黙って聞いてほしい」
告白した「彼女」の想い、その行く先とは。
「七渡にお互い告白しないっていう協定、今日で破棄しない？」
最後の勝負を仕掛けようとする「彼女」、その想いの行く先は。
最後に七渡が選ぶのは、誰から差し出された手なのか。
さぁ、ここからは本当の意味での核心的な所を語ろう。最後の選択、その行方を語ろう。故に、まだ未読と言う読者様、ネタバレを嫌う読者様は本当にブラウザバックをお願いしたい。
「だから・・・・・・どうしても、ウチと付き合って欲しいの」
「翼にもっと好きになってもらえるような、翼の許嫁と堂々と名乗れるような相応しい男に絶対になるから。俺とお試しでいいから付き合って欲しい」
「お試しじゃなくていいよ。こちらこそ、真剣にお願いします」
そう、七渡は心を見つめ、己の思いと向き合い。最後に選んだのは翼の手。ずっと自分を好きでいてくれた、彼女の手。
晴れて翼と恋人同士となり。何も変わらぬように見えて、だが違って。離ればなれになっていた日々を本当の意味で取り戻していくかのように、二人は二人の時間を紡ぎ、思いを重ねていく。
育美が去ったバイト先で二人でコンビを組んで仕事をしたり。自然と翼の家にお泊りして、彼女の手料理をごちそうになったり。新婚さんにも似た、甘い日々は積み重なる。
そして歩き出す、翼と七渡の周りの者達も。新しい恋を掴んだ柚癒、負け犬同士仲良くなった麗奈と育美、そしてイイ感じになっていく深海と一樹。
誰もが皆、思いに揺れ恋に揺れ。その果て、成長の扉を開き、歩き出していく。
「なので、お母様から七渡君の許嫁と名乗っていい許可をください」
そしてそれは、翼と七渡も言うまでもなく。改めて、許嫁という二人だけの絆を結ぶ。
嗚呼、今にして思えばこの作品は、七渡を巡るラブコメであり、彼が恋に触れ成長する物語であり。そして翼という一人の少女が、彼を好いていた少女達の思いを受け取り、その想いも纏めて幸せになっていく作品であったのかもしれない。
「この世界に生まれてきてくれてありがとう」
大切だからこそ、もう離さない。迷い飛んでいた翼は自分だけの止まり木を取り戻し、止まり木は自分を運んでくれる翼と再会し。比翼の羽根となって何処までも飛び立っていった。そんな愛と成長の物語であるこの作品に私はこう言いたい。こちらこそ、この世界に生まれて来てくれてありがとう。巡り会ってくれてありがとう、と。
離れ迷い、今紡ぎ直し更に強くなった二人の絆。その絆の限りに進むなら、きっといつか表紙の景色に辿り着く。
だからこそ、今。私は二人を万感の思いと共に、万雷の拍手を以て見送りたい。
どうか是非、画面の前の読者様も見送りの列に加わってほしい。この万感の思いを味わって欲しい次第である。
あなたを諦めきれない元許嫁じゃダメですか?4 (角川スニーカー文庫) | 桜目 禅斗, かるたも |本 | 通販 | Amazon
