
前巻感想はこちら↓
さて、前巻より始まった引きこもりの杖職人、賢師の人生のお話。彼が誰もいなくなった奥多摩に引きこもっている間にも、世界は進んでいく、復興への道を歩いていく。だけど世界はいつだって、牙を剥くのを辞めたりしない。今巻においては新たな危機も起きたりする中、賢師がより深く世界に関わっていく事を余儀なくされる巻である。
「嫌だ。今の生活気に入ってんだよ」
前巻、竜の魔女に攫われてから青の魔女に救われて帰ってきた後。一人暮らしかつ傍にいる訳でもないから不安だ、という事で青の魔女により慧が呼ばれて。賢師は身を守る手段として、いわばテレビ電話的な役目を持つ目玉の使い魔を出す呪文を教えてもらう事に。
「そうなんじゃないかと睨んだんだよな!」
そんなことをしている間にも、人里では食料の生産が改善、更には貨物列車も復活すると復興の歩みが次々と進んでいる。世の動きには関係なく、研究の為に反射炉を作って、融解させたグレムリンやら色つきのグレムリンを研究している賢師が感じたのはマンネリ。量産型の魔法杖は作っているけれど、ここ一年は外見にこだわるばかり。何か要望はないかと慧に聞いてみれば、魔力逆流を防止する機能をつけてほしい、という事であり。早速青の魔女にも意見を聞きつつ、再凝固させたグレムリンを柄に使う、という方法で解決して見せる。
更に発展する賢師の技術。それに対し、人里ではグレムリンの加工、量産技術が確立され一般の職人でも魔法杖が作れるように。賢師の立ち位置はオーダーメイド、高級品専門のような立場へと移行を始め、魔女集会の面々からも注文が入り。
「暴走を収めてもらった!!」
その注文の一本、それが渡ったのは地獄の魔女(表紙左)。足立区で生まれ、魔力を制御できずに地獄へ変え、悪人を食らい生きてきた魔女。暴走も収まったという事で日本中を回り悪人を食らい、悪として人を救おうと決意した彼女。旅の相棒となるような杖を作りたいと賢師は願う。三つ口があるから三つの呪文を同時に使える彼女にふさわしき杖とは? グレムリンの共振の研究をし、最適な形を見つけて。結果、錫杖型の魔法杖、「ハリティ」を作り出す。
旅に出る地獄の魔女。東京で始まるのは港区奪還作戦。けれど不穏は突如襲い来る。東京中で流行を始めた、頭にキノコが生える奇病。魔力欠乏を経験した者の致死率は百パーセント。慧も青の魔女も倒れてしまう中、青の魔女の元を訪ねた賢師に渡されたのは、未来氏の魔法使いからの手紙。 それは台東区を支配する花の魔女の元に特効薬を取りに行ってほしい、彼女に願えるのは君だけだ、というもの。
「知らない方がいいわ。でも、悪いものではない」
行ってみれば、子株を取り上げるのを手伝ってほしいというお願いをされ。生きていた子株を取り上げ、死んでいた子株を埋葬し。すると花の魔女から、何やら秘薬めいた蜜を飲まされることに。
特効薬を手に入れた事で、確かに救えた命もある。だが間に合わず、東京の人口の二割が死亡してしまった。その先に広がるのは新たな人類生存圏、東北とのつながり。未開の地との関りは彼に何をもたらすのか。
より世界が広がり、新たな友人も増える今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。