読書感想:ハリボテ魔導士と強くて可愛すぎる弟子

 

 ハリボテ、または張子の虎。といった言葉を画面の前の読者の皆様も聞いたことはあられるであろう。そんな評価をされている人と言うのは、マイナスイメージからそんな呼ばれ方をされている事も多い。だがしかし、そんな呼ばれ方をしている人たちだって、好きでそう呼ばれている訳ではないのかもしれない。つまり何が言いたいのか、という訳であるが。人のつまらぬ悪口を言うのは止めましょう、という訳である。

 

 

さてこの作品の主人公であるタクト(表紙右)もまた、実力的には「ハリボテ」である。ではどうハリボテなのか。

 

「何度見ても、たったの5か・・・・・・」

 

 魔法や魔導士、そして魔物が存在する割とベーシック的な舞台である異世界。かの世界に存在するリカーロゼ王国。この国において歴代の筆頭宮廷魔導士を輩出する名家の出であり、自身もまた八歳の時に「ステータス魔法」と呼ばれる魔法を開発し、「特級魔導士」の称号を得。だがそのステータス魔法は、どう見ても魔力が「5」しかないという魔導士としては致命的に過ぎる弱点を突き付けてきたのである。

 

個人的には楽隠居したい。その為の方法として、杖職人の道も見出している。だが家の後継ぎという立場は捨てられず、捨てる為には指定の魔導学園を卒業し、当主になった後できちんと次代に受け継がせるしかない。通信制の学園に入学するも、認可取り消しという事実に一蹴され。タクトは王都にあるオラリオ魔導学園に入学するしかなくなる。

 

学園長の友人である祖父の口利きにより裏口入学を果たし。それでも目立たぬよう、身の丈に合った生活をするはずだった。

 

「フフフ、見てる世界が違うんすよ」

 

 だが、その願いを踏みにじる元凶はすぐ側に潜んでいた。その名はマナマルカ(表紙左)。エルフにとっては忌み子なハーフエルフの元孤児であり、魔力だけは膨大なタクトの弟子兼メイドである。

 

師匠の秘密を知らぬからこそ、無自覚に師匠を持ち上げてその思惑を斜め上に勘違いした方法で語り。よりにもよってそれが受け入れられる事で、彼の気づかぬ間に勘違いの下地が整っていく。知らぬ間に、何も知らぬ級友達から崇められていく。

 

彼女によるドタバタに振り回されながらも、図書館の主であるネシャトと魔力を増やす研究をしてみたり。魔眼持ちの苦学生、カレンに秘密を見破られて押しかけ弟子になられたり。

 

これ以上ない程にドタバタが続き、いつも目の前に現れるのはどう足掻いても強敵ばかり。だが、何故か彼はいつも乗り切っていく。

 

「・・・・・・なんかその、ごめん」

 

 彼の力となるのは、ハリボテの源である幻覚魔法しかないのに。何故か。それは業運と呼ぶべきか、悪運と呼ぶべきか。何れにせよ、まるで神がかりのようなボタンの掛け違えとすれ違いの果て、何故か彼の元には勝利が転がり込んでくるのである。

 

それが更なる勘違いを招き、新たな展開の呼び水となる。彼が望まない所で。

 

口当たり軽く読める、思わず笑ってしまう展開が目白押しのこの作品。今、元気になりたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ハリボテ魔導士と強くて可愛すぎる弟子 (MF文庫J) | 鬼影スパナ, としぞう |本 | 通販 | Amazon