読書感想:サクチシノニエ 異端の儀式

 

 さて時に画面の前の読者の皆様は、心霊スポットに行かれた事はあるであろうか。心霊スポットというのはメジャーなものでは廃トンネル、意外な所では現役の遊園地など様々な場所に存在する訳であるが。宗教施設、それも新興宗教、カルトな宗教の廃墟もまた心霊スポットであったりする。無論信仰の自由故に新興宗教を信じる気持ちを否定するつもりはないのだが。正直、胡散臭さを感じる耳通りの良いうたい文句の宗教と言うのは簡単に信用しない方がいいのかもしれない。

 

 

とまぁ心霊スポットはこの作品には関係ないのだが、宗教と言うのは関係がある。この作品は茨木の山奥の村、佐口澌村より始まるお話、滅亡への物語であり。前作に比べ完膚なきまでに救いようがない、邪悪で醜悪で狂気な物語なのである。

 

芽璃(表紙)と言う名の少女の夢を何度も見、睡眠障害を患う少年、縫。両親は既になく、伯父夫婦に育てられるも通り魔事件で亡くし。彼は偶々思いだした父の友人、大石夫妻を頼ることになり。夫妻が経営する養護施設に入るため、佐口澌村へと引っ越してきた。

 

「この村では未解決事件が起きているんだ」

 

ここは小学四年生の夏休みに一度来た場所、一時期暮らした場所。だが縫は、小学校五年生頃の記憶から前は何故か持たず、覚えておらず。再会した元同級生、緒途より教えてもらったのは奇妙な話。この村で起きた、未解決事件のお話。

 

山中の池から、四人の成人男性の裸の遺体が繋がった状態で発見された最初の事件。村内の農家の男性が、隣の家の住人の女性に生きながらに喰われた第二の事件。若い女性が山中を歩きながら少しずつ自分の肉を切って削ぎ落していって死んだ第三の事件。おぞましさを感じつつ、一先ずは村に馴染みバイトも始め。ある日、偶然に訪れた神社で出会ったのは、芽璃。サクチシサマ、という土着の神様の宮司であった祖母がいた彼女に、墓参りに付き合わされ。緒途も芽璃の事を覚えていた中、これより不穏の幕が開ける。

 

「ねえ・・・・・・この絵、なんだか気味が悪くない?」

 

縫の荷物の中にあった、彼が小学四年生の頃に使っていたと思しき自由帳。そこに書かれていたのは、未解決の三つの事件を予見させるような死体の絵。縫の記憶の断層、その前を探ると出てきたのは、縫が金属バットで級友をボコボコにした、という知らない事件。気味の悪さを感じる中、巻き起こる第四の猟奇殺人。被害者は大石夫妻、そしてそれは、縫の自由帳に書かれていた死に方の通りに。

 

「逃げよう」

 

遺品となったスマホから見つかった録音データ、死の間際の告白、それはサクチシサマの呪いの実在を示すもの。逃げる、という選択肢を選ぶ中容赦なく発生する第五の猟奇殺人、被害者は、あの子。

 

そこに現れた芽璃。縫を捕まえ、彼女は縫をサクチシサマと繋げ。極限状態の中、芽璃を求め繋がった事で判明するのは全ての事実。縫は最初から掌の上。そして、その全ては彼女の盲執な愛が齎したもの。

 

「じゃあ、皆さん殺し合いを始めて下さい」

 

開いてしまった扉は、最早閉じることは出来ず。堕ち往く先、狂う先は奈落。そして自由帳の最後の絵、世界の破滅は巻き起こる。その願いの通りに。

 

正に醜悪で残酷、救いなし。食事前後に読むのはお勧めできぬかもしれぬ。そんな凄惨さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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