読書感想:異世界除霊師

 

 さて、除霊というとエクソシスト、という映画が思い浮かぶのは私だがそれは置いておいて。画面の前の読者の皆様は時折テレビでやっていた心霊映像系の番組を見られた事はあるであろうか。どう見ても偽物、という映像もあったかもしれぬし、背筋が凍るような映像もあったかもしれない。もしあの映像の中に本物が存在していれば、幽霊というのは存在、している筈であろう。では画面の前の読者の皆様は幽霊を、信じられるであろうか。

 

 

信じるか信じないかは各自次第として。この作品はそのタイトルの通り、異世界で除霊するお話であり。先に言ってしまうと少し懐かしい香りもするお話なのだ。

 

冒険者や魔物、が存在するテンプレ的な異世界。この世界、只一つ認められていないものがあった。それは幽霊の存在。ゾンビはいる、しかし幽霊はいない。そして公的に認められていないのなら、その存在に対するスキルはどう扱われるであろうか。答えは簡単、役に立たぬスキル、という扱いである。そんなスキルである「除霊」しか使えぬ冒険者、ジョブは神官のレイジ(表紙右)。神官ならば使える筈の回復魔法すら使えぬ彼は、役立たずにしかすぎず。所属していた冒険者パーティーから追放される事となってしまう。

 

「俺自身がやめようと思わない限り、俺の冒険は絶対に終わらない」

 

しかし、普通であれば絶体絶命のその危機も、基本的には屁理屈に近い理屈屋な彼にとってはどこ吹く風。特に気にする事もなく、一先ず今日は宿屋で過ごす事となって。だがそこで、大きな一件が巻き起こる。

 

「本当は、とっても怖がりなの」

 

突如巻き起こる心霊現象、偶々同じ宿屋に泊まっていた勇者、セフィラ(表紙左)は実は怖がり故に役に立てず。しかし、初めて役に立つレイジの除霊スキル。かつての仲間達も巻き込み立ち向かう事となる、宿屋の心霊現象。それは二人の地縛霊が関わっていた、という事故物件そのものな話。

 

皆で夜を乗り越え、セフィラにレイジはスカウトされる事となり。勇者の声も届かぬ所、という話を持っていた猫の亜人、キャシー(表紙中央)も仲間に加わって。三人で向かっていくことになるのは新たな冒険。それは、幽霊というレイジにしか退治できぬ存在をあの世に送り返す為の旅。

 

悪魔に取りつかれた貴族令嬢、更には貴族の跡継ぎたちが行方不明になっている廃病院。それぞれの事件の中、見えるのは霊となった、魔物や人達の思い。

 

「・・・・・・除霊の理由が、できてしまったな・・・・・・」

 

何でもかんでも祓う、わけじゃない。幽霊であっても尊重する。しかし理由が出来たのならば話は別。 死者だって望み位ある。ならば、その願いを叶えるのは除霊師たる己の役目。

 

「さて・・・・・・次の依頼は、どうなることやら」

 

それこそは望んだもの。本当の意味での自分の冒険。その輝きの中へと突き進んでいくのだ。

 

何処か懐かしい雰囲気もあるかもしれぬ、熱い面白さのあるこの作品。真っ直ぐな作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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