読書感想:顔だけ良いクラスメイトが、やたらとグイグイ来る百合の話。

 

 さて、人と付き合う上で重要視すべきは何であろうか。顔の良さ、と言う方もおられるかもしれない。性格の良さ、と言う方もおられるかもしれない。その基準は人それぞれであるので、明確な正解はないかもしれない。しかし顔だけ良くて内面はクズ、といった類の人間は間違いなく付き合う人間としては外れであろう。そういった人間に引っ掛からないよう、気を付けなければいけない。

 

 

さて、この作品は一体どういう作品なのかそろそろ語っていきたい次第であるが。タイトルを見てしまえば一目瞭然、つまりはそういう話なのである。クラスでは陽キャグループに属するが内心はドライな律(表紙右)に、クラスでは孤高の存在の綴(表紙左)が、まるで猫のように内心を見せず、犬のように人懐こく攻めてきて始まるお話なのだ。

 

陽キャグループに属してはいるも、どこか人間関係にドライで、気を許した人間は少しだけ。今付き合っている彼氏、翔也とも何となく、周囲に誤解され囃し立てられ、振るのも違うから付き合っているだけ。そんな生温く乾燥した日々を続ける事一年、特に進展もなかったある日。放課後デートの終わり際、キスをされそうになり。

 

「だって、海道さん嫌そうだったから」

 

そこで声をかけて来たのは綴。切実な声の調子に秘められていたのは心配の感情。だがその次の瞬間、何故か綴は律にキスをしてきた。それも、ディープキスまで。

 

「こんなに気持ちよさそうな顔しておいて、嫌ってのは無理があると思うな」

 

「あの翔也って人と別れて、わたしと付き合わない?」

 

どういう事か、嫌な事をして、と問い詰めたらじゃあ検証してみようと家に誘われ、またディープキスをされて。その顔を写真に撮られ、更に唐突に言われたのは告白めいたセリフ。真意を測りかねる中、何故か彼女の家でご飯を一緒に食べることに、更には綴のミスで服が汚れてしまい、お泊りする事にまで。

 

測りかねる彼女の気持ち、それは自分の気持ちを。嫌、である筈なのに何故か、拒めない。気持ちを測り兼ねる中、目撃したのは綴が見慣れぬ女子を家に招いている現場。心揺れる、その理由もわからぬままな時、妹である調から恋人として紹介されたのは、女の子である優。身近にある知らない世界、そこにあるのは綴からも向けられている思い。

 

「ちゃんと責任取ってちょうだいね」

 

知るのは、綴の家に来ていた少女との関係。そこに感じるのは嫉妬の感情、自覚するのは自身の変化。自分はおかしくなってしまった、それはやはり彼女のせい。

 

「私は、矢来さん。あなたが好き」

 

だからこそ、変わった気持ちに正直に。思いを告白し、本当に好きな人とのラブコメが始まるのである。

 

ぐいぐい来られて気が付けば落ちていく、転がり落ちる百合が見所であるこの作品。転がり落ちてみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 顔だけ良いクラスメイトが、やたらとグイグイ来る百合の話。 (ファンタジア文庫) : 能代 リョウ, べにしゃけ: 本