
さて、電話の度に自分に近づいてきて最後には自分の後ろに立っているのは皆様ご存じ、都市伝説の怪異、メリーさんである。しかしこの作品に特に怪異、というものは関係がない。何故ならばこの作品は現代ラブコメであるので。とそれはともかく。画面の前の読者の皆様の中にも推しのVtuberがおられる方もいるかもしれない。そんな皆様の推しVtuberの中にも中の人、と呼ばれる人は存在する訳で。中の人も只の人間、普通に日常生活があるのである。
さてこの作品はどういう作品か、というと。作品キーワード、愛が重い、そしてじれ甘。それは間違っていない。この作品は推しへの愛と、一人への愛。その二つが交錯して今の所交わらず平行線を進む、じれ甘な作品なのだ。
ゲーム大好きなこと以外さしたる特徴なしな少年、並木平太。彼には今、ガチ恋な推しVtuberがいた。その名は朧月ひらり(表紙左)。コンビニでバイトしたお給料を全て注ぎ込み生配信には一コメを残すくらいにはガチ恋なのだ。
「でも私はただ、並木くんのことが大好きなだけなんです・・・・・・」
が、しかし。最近彼の事を悩ませる女の子が一人。同じクラスの美少女、さくら(表紙右)。女神と形容される彼女は、平太の事が大好きとこれでもかとぐいぐい来る。・・・・・・それだけなら、まぁよかったのだが。彼に話しかければマシンガントーク、気が付けば個人情報を全て知っていたり、彼の家族と仲良くなっていたり。若干ストーカーめいた重めな愛を見せているのである。
「ずーーっと前から、運命の赤い糸で繋がっていました♡」
そんな思いを向けられて、まぁ平太も一般的思春期男子、悪い気はしない。だが彼にはガチ恋の推し、ひらりがいるから思いに応えられる訳はない。 だけど彼は知らない。さくらこそがひらりの中の人であり、かつて同じ夜行バスに乗った時に平太が助けた経験があると言う事。その時、限定アイテムを見たから、さくらは平太がリスナーに居る、と気づいているという事を。
ならば告白すればいいのでは、と思うかもしれない。実際告白して証明すれば、その愛は手に入るであろう。だけどそれは本意ではない。何故ならばさくらは、さくら自信を愛して欲しいから。だからこそひらり、という電子の自分への愛を自分へと向けさせるため今日も頑張っているのだ。
だけど、そう簡単には交わらぬ。何をやっても高水準なイケメン、準やさくらの幼馴染で平太と趣味が似ている彩月と四人グループ的な感じに仲良くなり、共に出かけたりもする中。ショッピングモールで再会したのは、かつて平太をフッてトラウマを刻んだ女子。後日、さくらと二人きりのお出かけ中にまた再会し、向こうも彼氏連れで向き合う事に。
「ちゃんと、見ていく」
その場はさくらの切り込んだ発言で収まり。向こうの彼氏だった少年、明人とVの話題で意気投合。その先、平太の思いも少しだけ変化を見せ。ひらりだけを見るのではなく、三次元も、そこにいるさくらもきちんと見ていく、という決意を口にするのである。
正にじれったくて甘くてこそばゆい、中々に重くて初々しいラブコメが繰り広げられるこの作品。真っ直ぐなラブコメを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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