前巻感想はこちら↓
読書感想:あなたの事が好きなわたしを推してくれますか? - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で自分が推していた存在である三人の少女から推されているという事が判明し、互いに推しあう、という中々類を見ない状況になったこの作品の主人公、啓太郎であるが。前巻ではのぞみ、という推しに推されて始まった訳であるが今巻では何を描いていくのかと言うと。今巻では表紙にもある通り、推しのVtuberであるマリエルこと、芹香。多分彼に対する思い出は一番長いであろう彼女をメインに据えたお話なのである。
「ひ、人の彼氏にベタベタしてんじゃないわよ!」
前巻の顛末の後、数年ぶりに訪ねた芹香の家。しかしそこには、芹香にとっては闖入者である先客がいた。その名はラミア。同期のVtuberであり啓太郎のゲーム配信の視聴者、更には彼にガチ恋していると宣う相手。彼女の事を引き離す為、咄嗟に彼は自分の彼氏であると嘘をついてしまい。売り言葉に買い言葉で今度行われる、啓太郎の庭であるFPSの大会で決着をつけることとなる。
「・・・・・・・・・・・・素直に告白したら、けーたろはOKしてくれるのかな」
空回りしてしまった事がそもそもの原因、素直になれない自分が時々ちょっと、嫌になったり。啓太郎を巻き込み、何時間も練習に励んで。その裏で、彼は芹香の知らぬ所でのぞみの彼氏役としてお芝居の練習に付き合ったり、更には紗菜の彼氏役として一緒にコスプレに付き合ったり。まるで競い合うようなアプローチに振り回されながら。合宿と言う名目で海に行ったりしつつ。やっぱり推しとして、ファン同士であってもそこはライバルとして。可愛く争い合う中、芹香の本心が見えてくる。
その本心は、啓太郎への愛ばかり。幼い頃からずっと育んできた、彼への真っ直ぐな思いばかり。一緒にいたいからこそ、彼に近づくために練習したゲーム。
「・・・・・・やってることが今と全然変わってないわね」
そう、今も昔も変わらない。自分の行動原理の根底にあるのは彼、それは今も昔も変わらない。だからこそ、戦う時は全力で。推し同士であっても、ゲームであれば本気で。
そんな賑やかさの中、それぞれの心の中で少しずつ、推し、というものを超えた思いが動き出していく。少しずつ、推しという関係のその先を願っていくのである。
確かに彼等の関係が少しずつ動き出していく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: あなたの事が好きなわたしを推してくれますか?2 (ファンタジア文庫) : 恵比須 清司, ひげ猫: 本