
さて、戦争とは無論遊びではない。戦場と言うものがあればそこで人が死んでいるのだから。しかし、テレビゲームで戦争を扱うものがあるから、という理由ではないだろうが、電子化が進んでいるという事もあるのか。海の向こうの戦争の映像は、どこかゲームのような印象を持つ、という方もおられるかもしれない。しかし忘れてはいけぬ。戦争と言うのは起きない方がいいものなのだ、という事を。
と、まぁそんな話はともかく。この作品において戦争、というのは娯楽でありスポーツである。三十年前の「大陸間戦争」を機に鎖国し、今や都道府県すらなくなり六十六の「シティ」を中心とした新国家体制を取っている日本。 この作品におけるシティの一つである「スクールシティ」、その一つである「ネイラ」。点在する数十の学校を中心に住宅や商業施設が集められた都市。この街において、都市運営を担うAI「アスカ」に選ばれた者は、スポーツのスターのような、戦争で戦う兵士になる資格を与えられる。 その1人となった、欧州帰りの少年、フユト。第七学区と呼ばれる学区の学校に通う事になった彼は、九十日間の養成期間を共に戦う仲間達として三人の少女とチームを組むことに。
尖兵志望の伝説を持つ元兵士、リリセ(表紙)、のんびりとしつつも抜け目ない偵察希望のヒィナ、中世的で謎だらけな狙撃志望のクロエ。何故かフユトが班長として選ばれ、一先ず欧州でも似たような経験があるからこそ足は引っ張らず。他のレベルの低い候補者たちの中、みるみる頭角を示していく。
「俺は、”向こうの戦争”をこの国に持ち込むつもりはありませんよ」
「あの女は片付けたほうがいい」
だが、リリセやヒィナたちはどうやら気付いていない。どうもフユトが何らかの事情を抱えている事を。教官であるヌガタとこっそり丁々発止し、アスカと個人的に、それこそ仲良しの様子で通信する彼。訓練期間も終わる中、とんでもない提案をしてきたクロエが意味深な言葉を残す中。爆撃ありの最終選抜を生き延び、何とかユニットとして戦争の舞台には上がるも。ユニットのコンセプトのせいで軍資金ゼロ、更には初戦の相手がトップ5の一角といういきなりの絶体絶命。
「じゃあ、貸してください―――一億ほど」
ではどうするのか。ここからフユトがとるのは普通はやらぬ一手。役人であるイヌカイに一億の借金をし装備を整え、実際の戦争においては奇想天外な策で勝利を導き。
「飽きたからもう見たくない。見なくて済むように必死に働いてる」
「お願い。わたしだけは信じてほしいの」
その先、様々な思惑がまた始まる。フユトとアスカの計画、それはネイラへの敵対。一体何をしようとしているのか、それはまだ誰にも分からぬ中。意味深な態度を見せるリリセたち仲間達と共に新たな戦場へ向かっていく。
心躍る戦争と、秘密の多い骨太な物語が魅力的であるこの作品。安心して燃えられる作品を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。