さて、兄と言う生き物は妹の為には何でもできる生き物であったりすることもあるのだが、そういう場合、シスコンと呼ぶべきなのかもしれない、その兄は。しかしシスコンと言うものはそういうものである。妹の為なら兄は、世界を救っちゃったりも出来るのだ。
三年前、吸血鬼やサキュバス、オークと言った異種族を排除するために教会と、天罰代理執行軍と呼ばれる組織による戦争が巻き起こり、異種族狩りが巻き起こり。神に捧げる正義の戦争、にしても傷跡は大きく、人々の中に反感も残っている世界で。妹であるルナ(表紙左下)を「救う」ため、兄である主人公、ノアはルナから女性の扱いの手ほどきを受け、犯罪組織に取り入り、とある作戦を決行しようとしていた。
「怖かったよね。つらかったよね。でも、もう本当に安心していいよ」
それはエルフの公爵令嬢、大切に、半ば箱入り気味に育てられた事で、外の世界にあこがれを抱くリリ(表紙左上)の誘拐作戦。犯罪組織に作戦を提案、無謀にもパーティーを抜け出し外出した彼女を攫い、いい所で冒険者として助けに入って、犯罪組織を返り討ちにし、彼女の印象に残った後、リリの父に面会し、暫くリリの護衛となる事に。
さて、ノアは何をしたいのか? どうみてもマッチポンプ、であるのだが。しかしこれには勿論、理由がある。その理由とは、リリの、ひいては異種族の血を頂く為。それはルナの為。 とある事情で、本人はトランクの中に詰められる大きさしかない彼女を解放する為。ノアは血を集めようとしていたのだ。
そう、ノアとルナは吸血鬼。 その事情を隠しながら、リリと向き合い、彼女のお願いに付き合って。無理に止めるのではなく、彼女の願いを肯定し、世の中の事を教えてあげたりして。共に観劇に行ってみたり、勇者であるロベールの戦いを見たり、ノアの既知の相手、クロエ(表紙右上)と共に冒険してみたり。
時にドキドキさせられたりしながらも、順調にリリはノアに惚れこんでいく、計画の通りに。 だがそこへ水を差す影。勇者であるロベールがノアの正体に気付き、襲撃をかけてきて。やむを得ず正体をバラし、勇者とのとある因縁を断ち切るために激突する事に。
「その想いはノアが吸血鬼だって知った今も変わっていない!」
戦場から引き離されるリリ。その胸にあるのは好きと言う思い。その想いを聞き、ルナは兄の無事を信じていると告げて。 その想いを叶えるのは当然、と言わんばかりにノアは不死身の勇者、ロベールとの戦いに打ち勝って見せる。不死身、という特性のからくりを活かした意外なる一手で。
「表に出した言葉は全部、俺の本音だよ」
その先、もう隠しごとはしないと全部明かして。改めて絆を結んだリリから血を貰って。また新たな旅に出て行くのである。
さっぱりとしていて真っ直ぐな性根をしたお兄ちゃんが活躍するからこそ、面白さあふれるこの作品。 心が熱くなる作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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