
さて、このブログをご覧になられている読者様は多分、日本人の方が多いと思われるが。ここ日本で生きていると、基本的に戦争、戦場と言ったものはテレビなどの画面を通してみるもの。どこか遠い世界、であるかもしれない。しかしこの世界のあちこちでは今、確かに戦争が起きており。誰かが死んでいるのは一つの事実なのである。そして戦場には兵士だけではなく、傭兵と呼ばれる者達もいるのかもしれない。この作品はそんな、傭兵な彼女達の戦場での日々を何気なく描いたお話なのだ。
「三、四時間の睡眠で、目覚めた瞬間に動けるので・・・・・・。 傭兵、向いてるかもって」
英語もフランス語も出来はしない、中学卒業後、毒親から逃れる為に東京へとやってきて、フリーターとしてアルバイト漬けの日々を送ってきた少女、凛子(表紙左)。親との関係で心身ともに消耗し尽くし、残りの人生は消化試合。そう考える彼女が、バイト感覚で叩いたのは民間軍事会社の扉。面接官にここに行ってみろ、と渡された地図の場所、寂れに寂れた雑居ビル、そこで出会ったのは先輩傭兵である渚(表紙右)。
「来月、日本を発つ。準備はいいかな」
彼女直々のテストに才を示し合格を貰い、早速連れていかれたのは、紛争地帯である東南アジアの共和制国家、M国。その少数民族側の傭兵として参加する事に。
「私らは傭兵。軍人じゃないよ」
そこにあるのは、傭兵としての日常。それは凛子のイメージするような堅苦しいものではなく、いわば非正規雇用であるから割と自由があり、しかし故に何も教えてもらえない場所。渚を教官としまずは拳銃の撃ち方から教わる中、凛子は渚が思わず舌を巻くほどのセンスの良さを開花させていく。
一日で詰め込み、それを全部飲み込んで。新人傭兵として踏み出していく戦場で待つのは沢山の出会い。渚と犬猿の仲である傭兵、ノーザンに振り回されたり。キャンプの食堂の娘、ニノと独学な渚の演奏を見学したり。戦場ジャーナリストである葉月にハラハラさせられたり、少数民族の兵士であるパルジェの秘密を知ってしまったり、破壊工作兵であるドムの弟子になったり。
時に死にかけたり、時に傭兵の給料事情に驚いたりしつつ。戦場が当たり前になってきた中、破壊工作兵として渚と二人、敵地の街へ潜入する事に。だが破壊工作までは上手くいくも、敵軍に正体を看破されてしまい、逃走の中で初めての殺人を犯して。
「もう、帰りなよ」
否応なくイメージしてしまう、死と言うもの。それを実感すると言う事は、死神に目を付けられるという事。凛子の事を気に入っていた渚に帰るよう促され、戦場でしか生きられないという自らの過去を明かされ。彼女に逃がされ、一人拠点へと戻る。
『独断専行。命令無視で、水崎さんを助けに行きたい。手伝ってくれませんか?』
だけど、渚を放り出す訳にはいかないと心が叫ぶ。カッコよく生きたい、と憧れた背中をなぞるように。ドム、ノーザン、パルジェの手を借り挑むのは命令無視の救出作戦。
「生きてたし、100点」
その最中、露見する裏切り・・・・・・に先手を打つ、凛子のネガティブなシミュレーション。悪魔的、ある意味傭兵らしい思考で生き抜き、日本へ戻り。渚と姉妹の契り、的なものを結ぶのである。
大局に影響する訳じゃない、只戦場の駒として。それでも生き抜く彼女達の戦場の日常。そんな、戦場生活、姉妹生活を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。