読書感想:新しくできたお姉さんは、百合というのが好きみたい

 

 さて、昨今百合、もといガルコメと言うジャンルに分類される作品も増えてきている訳であるが、時々思うのだがガルコメというのは子供×子供か、大人×子供、というパターンが多い気がするのは私だけだろうか。気のせいではないとして、何故そう言うパターンが多いのであろうか? 私個人としてはよく分からないのだが、やはりそういった方が作品を作りやすいのであろうか?

 

 

と、そんな小さな疑問は一先ず脇にでも置いておいて。上記のパターンどちらにおいてでもであるが、舞台と言うのは二人が共通して居場所にしている場所であるものである。そしてこの作品は中々に珍しく、二人で同居している部屋、というある意味一番小さな世界が主な舞台。何故そんな事になっているのか、というと主人公、ヒロイン、共に社会人と言うガルコメにおいては珍しい状況から始まるからである。

 

父子家庭で育ち、一度は大学を出て就職するものの、勤め先の倒産を機に実家に戻り、それからは在宅のバイト生活であった春夏(表紙右)。ある日、父親から不意に言われたのは再婚してもいいか、というもの。快くOKを出し、顔合わせの日。母子家庭である相手、の娘として出会ったのが沙織(表紙左)。イベント企画会社の主任としてバリバリ働く三歳年上の女性。

 

「・・・・・・だったら、私と一緒に住む?」

 

更に大暴投と言わんばかりに父親から提案されたのは自立。やんわりと、まるで追い出すかのような提案。そこへ沙織から天啓のように齎されたのは、自分の住むマンションで共に暮らさないか、というもの。完璧に見えて実は家事が苦手な沙織、家事は得意な春夏。二人の需要は噛み合って、共に暮らすことになる。

 

「せっかくできた妹だもの。ギクシャクしたくない」

 

だが春夏はまだ知らぬ、沙織が友人であるまどかにしか明かしていない秘密を。彼女自身は本百合、言葉を選ばず言うなら同性愛者であり、春夏に一目ぼれしている事。そして沙織自身は母親と血のつながりがなく、繋がりと言うものに飢えていると言う事を。

 

 

だけど明かしてしまっては壊れるかもしれないから、隠す。姉妹の二人暮らしの中、隣にいる彼女にドキドキしてしまったり、朝ご飯が出てくるという当たり前の幸せに感動したり。 在宅のバイトである春夏に家では好きにして、といったら自分が読んでいた百合漫画を読まれてしまい、趣味として百合を紹介したり。

 

恋を知っている沙織、恋を知らぬ春夏。知らぬからこそ知っていく未知、それは胸にすとんと落ちてくる。だけど高まる心は隠しておけず、すれ違いを招いてしまったりもして。

 

「嫌、とは言ってません」

 

だけど、それでも。知った思いは止められず。そして恋は分からないけれど、姉と恋をするならそれでもいいかなと思えて。また結ばれて、一先ず姉妹としてまた恋をする関係が始まるのだ。

 

恋をしている私がここにいる、社会人同士だからこそどうにでも動かしていける。そんな動き続ける百合を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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