
さて、ラブコメの始まりとしてある日下駄箱に入れられていたラブレターが、というのは定番ではあるが。最近、ラブレターと言うのは最早絶滅危惧種なのだろうか。いちいち手紙を書かずとも今はスマホに入っているであろうLINEだののメッセージアプリで繋がっている事もあるだろうし、スマホを操作すればさくっと告白くらいは出来るであろう。そう考えると、ラブレターと言うのは最早ラブコメの中でしか見られないのだろうか。
とまぁそんな前書きから分かって頂けたかと思うが、この作品はラブコメ、もといガルコメである。そしてこの作品は誰が送ってきたか分からない、しかし容疑者だけは分かった状態から始まるガルコメなのだ。
「―――だって、普通なんてつまんないじゃん!」
だから特別になりたい、と生徒会を目指した少女、ひと葉(表紙左)。だが、現実はそうは甘くない。生徒会役員の一員にはなるも、二年生に進級し次代の生徒会選挙を控える中。成績普通、運動平均、特技無しの彼女は目立たずに。逆に共に生徒会役員である三人の少女の方が目立っていたのだ。
完璧な才媛でぶっちぎりの次代生徒会長候補の京(表紙右)。全校生徒友達な勢いなギャルの鹿乃愛、校内のファン多数な神絵師の咲姫。
「一体誰がわたしのことを好きなんだー!?」
『昔あなたと交わした約束を果たしたら、その時は直接この気持ちを伝えます』
そんなある日、生徒会室の自分の机の引き出しに入っていたのは「リリー」と名乗る誰かからの手紙。 この生徒会室の鍵の保管、そして完全に無人にはならぬという特性的に容疑者は京、鹿乃愛、咲姫の中の誰か。 だがどうもリリーは、ひと葉に会った事があるらしいけれど、彼女の方にその記憶はなく。一先ずその思い出を探る為、そして互いの事を知るために、と三人それぞれと休日にデートをしてみることに。
その中、明らかになっていくのは三人の、今までは知らなかった素顔。完璧に見えた京にも実は完璧ではない、空回りする部分があったり。そして三人それぞれ、どうもひと葉に思いを寄せているらしい、という事。どんどん分からなくなっていく中、ゴールデンウィーク後のテスト、そして生徒会長選挙の本番が迫って来ていて。一先ずはデートの頻度を減らしてみることに。
「―――特別なんだ、ひと葉は」
その最中、デートの後で甘えるような顔を見せてくるようになる京。重なる過去の記憶、それは幼稚園の時代に会っていたという事。かつては引っ込み思案であった彼女をひと葉が引っ張る立場であった、という事。
そこからどんどん京が出してくるのは、過去の甘えん坊な顔。しかし二人は今は生徒会長の座を争うライバル同士。過去の様に引っ張って欲しい京、そんな顔は見せてほしくないひと葉。
頑張れたのは、ひと葉に憧れていたから。なって欲しかった、ひと葉に生徒会長に。そうすれば昔に戻れるかもと思っていたから。 だからひと葉が諦めるなら、自分もなれなくてもいい、とまで言って。
「わたしの才原京は、そんなこと絶対に言わないで」
だけどそんなの、憧れた彼女じゃない。生徒会長になる為に頑張ってきた彼女の頑張りを自分のせいで否定したくない。 だから敢えて残酷だとしても、勇気を出して声をかけて背を押して。
「だから、これからは私、そっちも頑張るね」
決着する生徒会長選挙、その先に明かされたのは京と交わした約束。だが彼女はリリーではない、と告白するも、関係なく好きだ、と告白してきて。より状況は混乱していくのである。
明るめなガルコメ、な中に交わり交錯する思いと可愛さが輝いているこの作品。弾けるようなガルコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: だれがわたしの百合なのか!? (ガガガ文庫 ガゆ 2-6) : 悠木 りん, 万冬 しま: 本