
さて、時に戦争と言うのは数々の悲劇、憎しみを生むものでありそれが連鎖していき、徐々に断ち切れぬ鎖となっていく訳である。だが同時に戦争と言うのは、軍事系を中心に技術の発展を促すものともなる。しかし戦争により富を得、というシステムは決して成り立ってはいけぬものであろう。永遠に闘争を続けることは、世界全体の疲弊を招く。その先に待っているのは先細りの先の破滅、と言えるかもしれない。
だがしかし、一度できたシステムと言うのは更新は簡単にできるとしても、新たなシステムへの差し替えというのは簡単には出来ぬものであろう。この作品はそう言った作品である。戦争により成り立つ国の、システムを書き換えるべく奔走するお話なのだ。
「俺のような天才を失うなんてこの国の損失ですよ!」
豊かな湖と山々に囲まれ、芸術や学問が盛んな国、エースター。この国の大学に通い、国すらも一つの「家」として考える「家政学」を専攻する少年、ウィル(表紙左下)。子爵の甥と言う貴族の末端ではあるが、数年前に戦争で文官だった父親を亡くし、何とか学生をしていた彼は、今年からできた「卒業金」という制度に阻まれ、退学の危機に陥っていた。
「君、私の婿になる気はないか?」
そこへ現れたのは、戦争を続け各国から富を奪い成り立っている国、オノグルの若き女王、イロナ(表紙右上)。ウィルの書いた論文に興味を抱いた彼女はいきなり、婿にならないかと言ってきて。彼女の、戦争により成り立つ国を変えたいと言う思いを聞かされ。何が出来るかは分からぬが、と協力する事になり。一先ずお試しで半年、雇われてみることに。
「よし、陛下に掛け合って全員解雇にしてあげよう!」
戦争により成り立つ経済を覆すには、まず外貨。その獲得手段を探す中、見舞われるのは民族に根付く憎しみ。オノグルから襲ってきた、とは言えエースターの人間にオノグルの民は殺されたのは確かであり。ウィルは歓迎されず、使用人たちがストライキし。さてどうしたものか。自分についてきてくれたドリナ(表紙右下)とローザ(表紙左上)を除き全員解雇、という手段を叩きつけ。チャンスを与えると言う名目で、まずは使用人たちを形だけでも掌握する。
「俺は戦争以外の方法でこの国を救ってみせます」
「でも、憎み続けるのって疲れないか?」
全ては、戦争以外でこの国を富ませる為、救うため。当然憎しみは消えぬ、それでも疲れるからそのままでは。特産品として靴を見出し、輸出品として育てながら。夢物語を現実にするために。だが唐突に起こされるのは「損切り」という、噂から始まる誰かの一手。外貨取引が停止、冬を越せぬ可能性も。ウィルをドリナと共に追放し、イロナは悲しくとも戦争の準備へ。
「だって仕方ない。そんな君を一人にしたくないと思ったんだから」
しかしウィルは帰ってきた。策を携え、殺されるかもしれぬと言う事を承知の上で。
「君は我が国を導くトゥルルなのかもしれんな」
その先に小さな可能性の先に見つかったのは、危機を乗り切る大きな宝。まだ問題は山積みだけど、それでも前向きに進んでいくのだ。
経済をがっつり描きながら、大枠組みなファンタジーを進めていくこの作品。経済ものが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。