読書感想:『君は勇者になれる』才能ない子にノリで言ったら覚醒したので、全部分かっていた感出した

 

 さて、画面の前の読者の皆様は先人から何か、立場のようなものを継いだことはあられるであろうか。部長のような部活での立場でも、会社における立場でもいいが。しかし立場を引き継ぐと言う事は、その責任も同時に引き継ぐ、という事に他ならぬ。つまり、どういう事かと言うと。引継ぎの際は、きちんと何を引き継げばいいのか聞いた上で、納得の上で引き継ぐべきである。

 

 

ではこの作品においてはどうなのか。この作品における主人公、ダンは「勇者」である。しかも最強の。そんな彼が引退を目指していくお話なのだ。

 

前世、日本で学生。トラックに轢かれるという古典的な転生方法で、剣と魔法のファンタジー世界へ赤ん坊として転生し。しかし、彼はフツメンであった。周りがイケメンばかりで、せめて顔を見せぬべく鉄仮面をかぶって冒険者として行動し。 剣も魔法も才能もないなりに努力し、あり得ないくらいに努力を重ねて。気付いたら勇者になって、仲間と共に勇者パーティと呼ばれて魔王を討伐、更に復活したり新たに出現した魔王を討伐したり。 段々作業感覚で魔王を討伐し。そんな彼も気が付けば三十歳、親からそろそろ結婚を、とせっつかれるお年頃。それもあり日常へ戻りたくなった彼は、勇者と言う立場を押し付け、もとい継承できる相手を探す事とした。

 

「言ったはずだ。後継者を探しているとな」

 

まず初めに目を付けたのは、平凡な村に住む、才能無しのダメダメで、騙されやすい純真な少年、ウィル。続けて自分から弟子にしてほしいと言ってきたのは、勇者の血を引く本国の第一王女、タミカ。更には、彼の事が欲しいと執着する貴族令嬢、キャンディスが彼の事を越えて手に入れたい、と押しかけて来て。結果的にダンは、弟子を一人、候補を二人取る事となる。

 

週一回、ウィルを指導し。タミカもその片手間に指導し。時に勇者としての活動をし、出会いが欲しいとぼやきながら。かつての仲間であり、自分の事に心酔しているリンリン(表紙)に、仮面を取ってフツメンとして接したりしながらも。正体を隠し、彼は一から冒険者として歩き出す。

 

その途中、弟子達も参加する冒険者試験に魔王の部下が来襲し、更には祭りの場に復活した魔王までもが来襲し。舞台は地獄の中へと突き落とされる。

 

「僕は勇者を継ぐものだよ」

 

その最中、希望を自らの手で掴み取ると決意したウィルは、唐突に自分の限界を超え。新たな姿へと覚醒し。

 

「リンの国には手を出させるわけにはいかないからなぁ」

 

その後を引き継いで、ダンは一撃で全てを終わらせる。仲間の国を、何よりも出会いの場となるかもしれぬ交流会を護るために。

 

地に足の着いた部分と、ぶっ飛んだ部分のコントラストが面白く、くすりと笑えるかもしれぬこの作品。面白いファンタジーコメディを読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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