読書雑記:ドラゴンギャルのネイリスト

 

 さて、ネイルといえば基本的には女性のおしゃれであり、ギャルのような人種が施しているもの、という印象のあられる読者様もおられるだろう。男性がやるネイル、というのもあるらしいがそれは僅かなもの、と言えるかもしれない。それはともかく。ネイルと言うのは、言葉の意味的にはクローと言い換える事も出来る。クロ―、と聞くと何かファンタジー系の技、のような印象を抱かれるかもしれない。

 

 

そんな前説もさておき。この作品の作者様である折口良乃先生の作品を読んでみた事のある読者様もおられる事であろう。かの先生と言えば? そう、モンスター娘、モン娘である。モン娘ガチ勢ともいえる作者様であり、その亜人の描写はファンタジー、というだけではなく現実の生物的に緻密なものである。この作品もそう言った作品であり。ネイル、という題材をドラゴンのギャル、サヨリ(表紙)に絡めて描いているのである。

 

「なんか、ネイルとプラモって似てるんでしょ? 削ったり塗ったり」

 

亜人」という存在が普通に存在し受け入れられている世界。とある高校に通うプラモデル好きで、独学にて努力を続け作例がプラモ雑誌に乗る程度の腕前の少年、肇。彼はある日、友人との会話を聞かれプラモ作りが得意と知られ。ネイルとプラモが似ていると聞いた、という理由でネイルが出来ない自分にネイルをしてほしいとお願いされる。

 

「いや、作っていたのはプラモじゃない」

 

サヨリの懇願の顔を断る事も出来ず、まずはネイルの基本を調べつつ、原因探し。するとどうも、サヨリの爪には鉄分が多量に含まれ、プラモ用鉄ヤスリも逆に削れてしまう程固く。表面に微細な棘、のような鱗があるせいで塗膜が作れないという事が分かり。特殊なヤスリなら削れるが時間はかかる、という問題にどう立ち向かうかと考え。鉄分を逆に利用しネイルチップに磁石を仕込むという方法で何とかネイルをさせることに成功する。

 

「アタシは、吾妻クンの手、好きだかんね!」

 

それがサヨリに気に入られる事になり、もっととお願いされ気が付けば専属ネイリストのような扱いを受け。自分の内面を打ち明ける事も出てきて、今度は足の爪にネイルをする事になったり、サヨリの親友である四本腕の亜人、カーラにもネイルをしてあげることになったり。気が付けばどんどんとネイルの世界に引き込まれ、比重が傾いていく。

 

「吾妻クンの好きなこと、アタシがネイルで奪っちゃったんだよ」

 

その最中、サヨリとカーラが肇の元に通っている姿が偶々ファンにより盗撮されてしまい、父親からも禁止令が出て。それを何とかするために、ネイリストの資格を取ってしまおうと思い立ち。 だがサヨリは反対するかのように本心を明かす。プラモデルを作る彼が好きだった、そのスキを自分が奪ってしまったのだと。

 

「作りたいものを、作りたいように作ってるだけだ」

 

だが彼は言う、自分は作りたいものを作っている、それは変わらないと。だからこそこれからも、と。 好きが増えて、また続いていくのである。

 

亜人、そしてネイルを詳しく語りながらモノづくりの青春を描いていくこの作品。何かを作る面白さを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: ドラゴンギャルのネイリスト (ダッシュエックス文庫) : 折口 良乃, こむぴ: 本