読書感想:最強賢者夫婦の子づくり事情 炎と氷が合わさったら世界を救えますか?

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は、「機動戦士ガンダムF90」という作品をご存じであろうか。この作品、簡単に説明すると敵となるのは無印での戦争後、火星にまで逃れていた無印の敵軍の残党軍が敵なのだが。かの組織、基本的には老人が中心であり、その孫世代や子供達は先代の憎しみに巻き込まれて敵となっていた訳であるが。長々と続く戦争、の中では敵への憎しみというのは受け継がれていってしまう、ものかもしれない。

 

 

しかし、それはきっとあってはいけない事だろう。そんなものはその代で終わりにすべきだろう。この作品はそんな、引き継ぎ続けてきた憎しみに向き合い新たな道を探していく、そんなテーマもある作品なのだ。

 

三百年前、世界の十三か所に後に「呪晶石」と呼ばれる、あらゆる術を用いても破壊できず全てを殺す毒をまき散らす巨大な柱が落ちてきたとある異世界。いくつかの街が滅び、国も滅び。九十年が経ち毒は放出されなくなるも、三十年周期で呪晶石は降ってきて。あげく、呪晶獣と呼ばれる石の周りを縄張りにする異形の獣も現れて。世界はどんどん生存圏を削られていた。

 

かの世界で、とある土地に流れ着いた「朱雀の民」と、元々その土地に居て追われてしまった「白虎の民」。九十年もの長き間争いを続ける二つの陣営、そのトップ二人。朱雀の民の長、シラヌイ(表紙右)と白虎の民の長、アウラ(表紙左)。

 

「美しい・・・・・・」

 

幾度も引き分けを続けある日、偶然にも垣間見たアウラの素顔に一目ぼれし。胸の高鳴りを抑えられぬ彼の元、やってきたのは「世界塔」と呼ばれる超国家機関の巫女、グリグリ。

 

「白虎の統領と婚姻し、子を為せ」

 

彼女から告げられたのは、十年後にかつてない規模の呪晶石の襲来、大災厄が起きると言う事。その災厄を防ぐに必要なのは七人の賢者、その切り札はシラヌイとアウラの子になると言う事で。

 

「あなたがいない世界なんて、考えられません・・・・・・っ!」

 

その為にまずは決着を。蘇生魔法を予め用いた自爆的戦法で何とか勝利したら、実はシラヌイの事を戦いの中で好きになっていたアウラに泣かれ、思わずプロポーズしてしまい、それがあっさり受け入れられて。

 

だけど、九十年もの間戦い続けた禍根はそう簡単にはなくならぬ。シラヌイ、朱雀の民をよく思わぬ白虎の民も多くいる。だが、共に生きることはできる、と。共存を目指し、その為に国を作る為。強大な呪晶獣が巣食う都の跡地を制圧し、アウラの名前を付けた国を作る。

 

しかし、邁進する彼には目下の問題があった。それは言うなれば初夜。2人ともあまりに初心すぎて、用意を整えても中々うまく行かずに。もだもだしつつも四苦八苦、そんな中にさらに厄介事が。手に入れた国を狙い強国である帝国の魔術師が、死霊魔術で復活させた集団を率い襲い来る。

 

「私もです。あの子に、会いたい」

 

二人での戦い、鍵となるのは不可能と呼ばれた、炎と氷を合わせる究極の魔術。未来への願いを重ね合わせ撃ち放つのは、相反する力の重ね合わせが生む消滅の力。

 

その先に、無事に初夜も終え。アウラのストッパーが外れ、シラヌイにとっては幸せな、新たな悩みが生まれていくのだ。

 

夫婦の初々しいいちゃいちゃと、詠唱溢れる熱いバトルが見所であるこの作品。 甘くて熱い作品を読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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