読書感想:最強魔術師の弟子は冒険者ギルドの始祖となる

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 さて、ファンタジー的な異世界においてはよくある、というよりほぼ確実に存在するものとして挙げられるのは何であろうか。魔王、は微妙なラインかもしれぬ。魔族、はいるかもしれない。魔物、はほぼ確実に存在すると言っても過言ではない。では冒険者ギルド、というものはどうであろうか。ほぼ確実に存在すると言っても過言ではないかもしれぬし、主人公が冒険者であるラノベだって星の数ほどある。つまりは冒険者ギルド、というものは当たり前に存在すると言っても過言ではない。

 

 

しかし、既にある所から始まるものの筆頭とも言えよう冒険者ギルド。それを一から創り出すとしたら、一体どんな問題が発生すると思われるであろうか? その創設という部分に焦点を当てて綴られるのが今作品なのである。

 

異世界に転移し早三年。お世話になっていた亜人のコミュニティーの壊滅と共に世界最強の魔術師、「七曜」の一人である「紫」の魔術師、メリッサに助けられ彼女の弟子として日々修行に励む少年、アオイ(表紙中央)。

 

 そんなある日、彼はメリッサの取引相手である辺境伯、パトレット家との取引に同道し、魔獣退治のための効率的な仕組みの開発を求められ、意見として「ギルド」という枠組みを提案する。

 

絵空事であったはずのそれは、辺境伯の長女であるユーティ(表紙右)に受け入れられ彼女の賛同を得。政略結婚に行くのではなくこの領の役に立ちたいと言う彼女と、ちょっと辛辣な従者のルル(表紙左)の三人で、期限を設けた上でギルド創設の道筋は始まっていく。

 

 何故この世界には冒険者ギルドが存在しないのか。それは魔獣を退治しても何の益にもならぬから。ならば作るべきものは何か。それは正にゼロから、何も無い所から。

 

益になるものとして魔獣の死体から魔石を加工し。

 

求める規範とルールを定め、依頼も吟味し。

 

商業ギルドや鍛冶師といった既得権益とも折衝が起きぬよう、時に交渉し、お互いの妥協点を見出し。

 

「・・・・・・あんな三下に、僕たちのギルドをどうにかさせてなるもんか」

 

そして冒険者ギルドを潰そうと面倒な策をしかけてくるユーティの婚約者候補、ジャネリの策を覆すべく培われた魔術の力を存分に振るう。

 

 まさしくゼロからイチを創り出すように、時に周りとぶつかったり話し合ったりしながら成長していく子供達。彼等の成長と言う瑞々しい輝きがある、普遍的なファンタジーとは色を異ならせるこの作品。 正しく、普通のファンタジーに飽きた読者様にはお勧めしたい次第である。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

最強魔術師の弟子は冒険者ギルドの始祖となる (講談社ラノベ文庫) | 新張 依澄, マキトシ |本 | 通販 | Amazon