読書感想:クラスのプライド高めなお嬢様。家では俺のメイド

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様はメイドはお好きであろうか。一口にメイド、と言っても例えばスカートの長さ一つとっても違いがある訳であるが。メイドさん、というのはいつでも一定の人気を持っているジャンルである、と言ってもいいのではないかもしれない。

 

 

そんなメイドさんにも、例えば性格によって違いがある訳で。絶対服従系のメイドさんもいれば、ツンデレ系な主人とぶつかり合ったりしてしまうメイドさんもいる。この作品におけるメイドさんは、何方かと言えば後者と言えるかもしれない。

 

 

いつも何処か無気力、一人暮らしをしている平凡な少年、新之助。彼のクラスには二年間続けて同じクラスとなった、お嬢様がいる。その名も姫乃(表紙)。父親が議員という、正真正銘のお嬢様でクラスでも「姫様」と呼ばれる存在であり。彼にとっては、きっとこれからも関わらぬ相手である。

 

「メイドのカッコなんてって、バカにしてるんでしょ」

 

 

 だが何の因果か、二人の関係は繋がる事となる。新之助の、暮らしへの無頓着さに呆れた祖父により手配された家事代行サービス。 そこより派遣されてきたのが、会社の規則でメイド服を着た姫乃であったのだ。

 

 

訳も分からぬまま、しかし気まずいのは当たり前。だがチェンジする事も出来ず、一先ず毎週日曜日だけの関係となり。だがお嬢様育ち、というのは両極端なものと大体相場が決まっている。家事なんてやったことがない不器用、もしくは立場に似合わず器用。 姫乃は前者であり、早速家事をしようとしたら、数々のトラブルを起こす事となる。

 

 

「情けなくなんてないさ。慣れてないだけで、仁志川ならすぐに上手になる」

 

寧ろ、主人である新之助がそのサポートをする事となり。やる気を出しさえすれば普通に何でもできる彼の、意外と凄い部分に驚いて。自分の情けなさを自覚し、彼の為に頑張りたいと思うようになる中で。二人はお互いの事情に触れていく。

 

 

新之助の事情、それは母親との死別、父親の海外勤務。誰かのために頑張りたい、その誰かがいなくなってしまった事による無気力さ。

 

 

姫乃の事情、それは束縛し自分を人形のように扱おうとする父親への反感。自由に生きたいと願うからこそ、その準備のため、という思い。

 

 

何気ない、週一回。 言ってしまえばただそれだけの関係。 だけど、お互いに近づき明かし合う中で、心の距離が近づいていく中で。その関係と、時間が特別となっていき。学校でも少しずつ関わるようになり、助けられる事で。 よりお互いの思いは近づいていくのだ。

 

「いや、どうしても仁志川に来てほしいって・・・・・・思ってる」

 

だからこそ、お互いに願う。傍にいてほしい、傍にいたいと。思いが重なり、もう少し二人の関係は続いていくのである。人と言う字が、支え合っているように。支え合う関係が深まっていくのだ。

 

現状はストレスなくサクサク進む中に、ほんのりと深煎りしていくラブコメが甘くて堪らないこの作品。是非に続いてほしい、いや続けるべきだ。甘めで悶え転がるようなラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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