前巻感想はこちら↓
読書感想:恋人代行をはじめた俺、なぜか美少女の指名依頼が入ってくる2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、誰かのために親身になれる事、誰かのために真っ直ぐになれる事、それがこの作品の主人公である龍馬の強みであり、それが諸刃の剣であるという事は前巻の感想で私は説明した事だろう。 そんな彼の弱み、それは深入りしてしまう事。それは仮初の関係性では決して踏み込んではいけない領域であるのである。
「・・・・・・どうせアタシのためなんでしょ。マジで馬鹿なんじゃないの」
「リョウマ、こんなことはもう辞めよう・・・・・・?」
前巻の最後、たった一人の家族である姉のカヤへと、恋人代行のバイトをしている事がバレてしまい、否応なく激突する事になり。龍馬は今までカヤが隠していた秘密、自分も昔恋人代行のバイトをしていたと言う過去を知り、彼女の経験談から来る己にいつか訪れるかもしれぬ破滅の未来の予感を感じ。姉の願いもあり、恋人代行のバイトを辞める事を決意する。
仮初の関係ではなく、これからは普通の友達として。改めて葉月と、愛羅と関係を結び直す龍馬。しかし、残る最後の一人である姫乃との関係性の変化だけがうまくいかない。心の中に引っ掛かっているものがあるから。
折しも、過去の約束の条件を達成した姫乃に彼女の家に来て欲しいと誘われ。龍馬は改めて自身の思いと向き合う事を求められる。
自分は彼女とどうなりたいのか。一体関係をどうしたいのか。
背中を押す、カヤのアドバイスと愛羅の言葉。向き合い見つけた、自分だけの気持ち。
「姫乃のこと、大好きです」
それは彼女の事が好きであると言う思い。恋人代行としてではなく、一人の男として彼女の事が好き。彼女が他の男とデートすると考えるともやもやする、自分勝手かもしれないけれど、貫きたい思い。
「言い逃げ、ずるいよ・・・・・・」
「ひ、姫乃も・・・・・・大好き」
その想いは姫乃も同じ。仮初の関係なんてもう嫌だ、側にいてほしい。だから、と必死に彼を引き留め口にした告白の言葉。
もう語るまでもないだろう、二人はそもそも両想いであり、落ち着くべき形に落ち着いたのだという事だ。お互いだけを見つめ、特別な関係となり。付和雷同となり、まるで溶け合うかのように。お互いしか知らぬ顔を増やしながら、二人は順調なお付き合いを続けていく。
「どんなことがあっても必ず姫乃を支えるから。・・・・・・誰よりも支えるから」
その関係は、六年の時を経て落ち着くべき形へと落ち着き。そして二人の間に新しい命を増やして、これからも変わらず歩いていくのだ。
仮初から本物へ、そしてその先へ、何処までも続く一瞬の永遠を、これからは三人で。
リアルな恋物語だからこそ、真っ直ぐな感情があるからこそ。この繊細な甘さは良いのである。
画面の前の読者の皆様も、どうかこの終幕を見届けてほしい次第である。
恋人代行をはじめた俺、なぜか美少女の指名依頼が入ってくる3 (角川スニーカー文庫) | 夏乃実, ふーみ |本 | 通販 | Amazon