前巻感想はこちら↓
読書感想:恋人全員を幸せにする話 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であればこの作品のいい意味でのとんでもなさはもう分かっていただけているであろう。「複数交際」、という固定観念から見れば不義理で不道徳な行いを、それがどうしたと言わんばかりに固定概念に中指突き立てながら真っ当なラブコメをしていくこの作品。前巻ではお嬢様である遥華を救い出す事に全力を尽くす巻であった。では、今巻では不動は誰を救うべきなのだろうか。新たに彼の目の前に現れるヒロインであろうか。否、そうではない。本当の意味でラブコメを始める為に、まだ助けるべき存在が彼のすぐ側にいる。
それはリサ。不動の事が絶対的な存在である残念系幼なじみ。・・・画面の前の読者の皆様、こうは思われたのではないだろうか。彼女はもう救われているのではないか、救うべき余地なんて残ってはいないのではないかと。
それもまた否。絶対の存在であるからこそ、そこにはとある歪みがある。それこそが不動が受け止めるべきものなのである。
前巻の騒動で実家を飛び出してしまった遥華は必然的に不動の家で同棲することになり。しかし今までお嬢様として育ってきた彼女は、家事全般が壊滅的であり。ぐぬぬとなったリサに教えを請うたり、合宿みたいなことをしたり。不動と並び立つ存在となる為に、彼女なりに努力していく。
そんな中、リサへと近づく影が一つ。根本的に腐敗し機能していない生徒会を纏める生徒会長、刃鐘。リサの求心力を生かし広告塔とするために彼女はリサに広報への就任を要請し。不動に褒められたい、認められたいと言う思いから生徒会を利用すると言う形でリサはそれを承諾する。
承諾してしまったのならばもはや逃げられぬと言わんばかりに。撒きたくもない愛想を振りまく事を求められ。右に左に、とこれでもかと酷使されていくリサ。
だがしかし、それを黙って見過ごす不動ではない。イベントに駆り出されるリサをサポートする形で手伝いながら、逆に刃鐘を罠にかけ。それと同時に、自分の身を削ってでも頑張るリサの心に触れていく。
「ダメなわたしで、いいんですか・・・・・・?」
「ダメなお前も、大好きだ」
そばにいるのに必要なのは、資格などでは決してない。望のはただ、君自身であると言う事を伝えると言う事。それこそが、恋と言う鎖に囚われたリサを救うために必要である事。
リサとも改めて絆を結び直すと言う事、それこそが彼等三人の関係を本当に始める鍵。本当の意味での、複数関係のラブコメを始める扉を開ける鍵。
更に甘さ深まり面白さ高まる今巻、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。