読書感想:俺が告白されてから、お嬢の様子がおかしい。1

 

 さて、お嬢様と執事、ご主人様とメイド、という同じ家の中での身分差の恋愛もの、というのは時々存在している訳であり、そのような作品においての肝は何かと言うと、身分差もの、という面白さがあるかもしれない。身分差があって本来は結ばれぬもの同士。だからこそゾクゾクするのかもしれないし、その障害を乗り越えていく様が、面白さを持っていると言えるのかもしれない。

 

 

ではこの作品はどうなのか、と言うと。お嬢様と執事をヒロインと主人公に据えた物語であり。越えるべき壁は、超がつく程の鈍感な主人公。一先ずそこを乗り越える為、ヒロインがぽんこつさから空回りしながら頑張るお話なのである。

 

成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。世界的にも有名な大企業グループを実家に持つお嬢様、星音(表紙)。彼女には幼馴染といってもいいかもしれぬ存在がいた。その名は影人。両親の蒸発により天涯孤独となった所を彼女に拾われ、執事となった者。

 

「実は、他のクラスの方から告白されたんです」

 

「・・・・・・全てなんて持っていないわよ。だって、一番欲しいものが手に入らないんだから」

 

 

 彼もまた、眉目秀麗、成績優秀、スポーツ万能。星音の隣にいる為に努力し続けている彼の隠れファン、狙う者も多く。 二泊三日の旅行で留守にしただけで幾つも告白された、という報告を聞き。星音は内心歯噛みしつつも動き出す。

 

 

その理由は勿論、彼のことが好きだから。それこそずっと、ずっと昔から。だからこそ彼の心を手に入れる為に、日々様々なアプローチを目論み、実行に移す。

 

ある時は満員電車を利用し身体を密着させようとしたり。またある時は、級友に借りを作ってまで、自作の人生ゲームで二人で協力してお題をクリアしてみたり。

 

だけど、中々影人の牙城は崩せない。彼の心の中には明確に壁がある、明確に超えぬ一線があるからこそ。彼の鈍感も相まって、中々彼の心には触れられぬ。それどころか影人も歩けばフラグを立てる、と言わんばかりに。偶然にも休日だった彼に助けられ好意を抱いた「歌姫」乙葉が同じ学校に転校してきた事で。星音にとっての強力な恋敵が出現し、そちらへの対処も強いられる。

 

時に遊園地デートと言う目標を賭け、球技大会でお互いに協力する事にしたり。デートでそれぞれ、ルールを決めてお互いに二人きりだけの時間を設けたり。ライバル、そして友人としての関係も出来ていく。しかし二人は、まだ気づいていない。

 

「俺もまだまだってことか」

 

それは、本当に見るべきものは彼の心と言う事。星音に忠誠と一途な愛を捧げ、執事としてきちんと愛していて。だけど最後はつれない、その心を見る、という事である。

 

ポンコツ気味なお嬢様が空回りしながら頑張る、そんなこそばゆい甘さがあるこの作品。もどかしいラブコメが好きな方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

俺が告白されてから、お嬢の様子がおかしい。 1 (HJ文庫 ひ 06-01-01) | 左リュウ, 竹花ノート |本 | 通販 | Amazon