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読書感想:ちいさな君と、こえを遠くに2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、桜が散って緑へと移り変わって。空や奏太たちの新たな夢が歩き出したわけであるが。それぞれの目標に向けて歩き出す、というのはどういうことなのか。それはいつか、歩いている同じ道が分かれてしまうという事だ。その別れはいつかは来る。そして奏太と空は、高校生と小学生。年齢が離れすぎている二人は、同じ時間を過ごすことは出来ないのである。
だからこそ、声優養成所のレッスン、そしてボランティアの機会はとっても空にとっては大切な時間。しかし、本当に夢に向かっていくのなら。お別れの時は来る、というのが今巻なのである。
「ソラちゃんの夢、叶うといいわね」
高校三年生、声優養成所に通いだして早一か月半。昇級試験なるもので奏太たちはそれぞれ別々のクラスとなり。空は早くも飛び級によりプロの声優まであと一歩、という所まで近づき。しかしそれはレッスンで多忙を極める、そしてプロになると言う事は活動拠点が別になる、つまりはお別れ、という事の表れ。 空の事を心配するも、汀から聞かされたのは既にプロダクション所属、というのはほぼ内定済み、という事。彼女のしっかり者な部分に感心するも、今度は自分が行き詰まる。
汀からのリクエスト、それはラブソングをというもの。今まで挑んだ事のないジャンル、それに必要なのは恋。 恋と言うのは一体どんなものなのか。かつての自分を超える為には、しかし目を逸らしてはいけないと。そこにバンドメンバーから聞かれる、声優としてやりたいこととは、という問いかけ。 そこに答えを返す事も出来なくて。
「好きです・・・・・・わたしはカナタさんのことが・・・・・・大好きですっ・・・・・・!」
そんな中、東京にある中高一貫校を紹介された空から伝えられた、彼女の思い。嬉しいと言う思いと、彼女のためにどうすればいいのか、という思い。天秤にかけて選ぶのは、彼女の為を思う嘘。だけどそれは、ある意味残酷な言葉。それにより空は傷つき、調子を落としてしまう。
何が駄目だったのか。その原因はエレナが知っていた。かつての自分達の道を辿るだけでは駄目、それが出来る段階ではない。ならば、どうするのか。
「その曲に乗せて歌うよ。俺の―――本当の思いを」
「―――”ちいさな君と、こえを遠くに”」
やるべきことは只一つ、伝える事。伝える為の武器は何か、それこそは奏太だけの武器、歌声。声優として身に着けた新たな武器、それを用いて完成したのは初めてのラブソング。 そこに込めたのはちいさな彼女への、本当の思い。
正に透明感のあって、綺麗で。そんな心が洗われるようなままに駆け抜けていく今巻。最後まで皆様も楽しんでみて欲しい。