前巻感想はこちら↓
読書感想:魔王と勇者の戦いの裏で 3 ~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻でいつかヴェルナーにとってのヒロインになるかもしれぬ、マゼルの妹、リリーが登場したわけであるが。しかしこのままいけば、ヴェルナーもリリーも王都襲撃で死ぬ、というのは忘れぬようにしたい。 さて、画面の前の読者の皆様、こうは思われた事はないだろうか。 果たして王都が滅亡したくらいで、そこまで詰むのか? と。
ゲーム本編ではマゼルの勇者としての威光で強引にまとめ上げたようなものかもしれない。しかしそこまで詰んでしまったのは何故なのだろうか? その理由が分かるとしたら、ヴェルナーより上、大人世代が活躍する展開が必要であろう。それに必要なのは、内政パート。まだヴェルナーが主役になれぬ、陰謀と権謀術数渦巻く背買いが描かれていくのである。
「伯爵のご子息は優秀だな」
屋敷に戻ってきたヴェルナーを、メイドとして雇われていたリリーがお迎えし、後で父の思惑を問いただそうと決意するその表、ヒュペルトゥス王太子主導による王都に潜入した魔族達の殲滅作戦が実施され、犠牲を出しつつも殲滅には成功し。ヴェルナーは絡むところはなくも、王太子たちの中で彼への評価は上がっていく。
「ある意味で不運な子ではあるな」
彼の知識、野心も欲望も持たず、絞れば幾多のものを出してくれる。けれどまだ、未熟。海千山千の大人達とは違い、感情を押し殺すと言う武器も使えず。それでも真っ直ぐ、大人達に見守られながら。意外と多彩だったリリーを助手にしつつ、ヴェルナーは王都決戦に備え、様々な準備の布石を巡らせていく。
「人に名前を聞くなら自分から名乗れ、と言いたいところだけどまあいい」
が、しかし。やはり魔族達の魔の手は止まる事がなく。今度は国の間諜に紛れて、リリー達を狙った誘拐事件が勃発する、けれどそれはまだ、ヴェルナーにとっての予想通り。予め作り上げておいた連絡体制で事態を掴み、先回りする形で事態を収める事には成功する。
けれど今度、ヴェルナーにとっては予想外、面倒な時代が発生する。恩賞によって命ぜられたのは国境地帯の辺境の代官。 新しい魔将へ対する釣り餌の役目も兼ね、事態の中心である王都を離れ、どう足掻いても人材不足な中で防衛線をしなければならぬ、という状況。 準備の中、自然災害の記録がない事から気づいたのは、魔王に関する疑念。
さて、いきなり試練の時。果たしてヴェルナーはこの事態を解決し、王都に戻ることはできるのか。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。