読書感想:灰の世界は神の眼で彩づく 1 ~俺だけ見えるステータスで、最弱から最強へ駆け上がる~

 

 さて、この世界には色と言う物が存在している訳であるが、もしこの世界から特定の色がなかったら、それこそモノクロであったのなら。この世界はどう見えていたであろうか。色があるからこそ世界は美しい。しかし全頁カラーの漫画はやり過ぎている、そう思われる読者様もおられるかもしれない。

 

 

あまり色づきすぎても意味はない、のかもしれぬ。しかし色は重要である。そしてこの作品は、文字通り「神の眼」と呼ばれる力を得た事で世界が色づき始める少年、灰(表紙中央)の物語なのである。彼が最強に成り上がっていく物語なのだ。

 

ダンジョンが出現し、そして魔力を持つ超常者と呼ばれる者が存在するようになったとある現代世界。生まれ持った魔力は成長しないその世界で、大きな魔力を持つ者は富を得て持て囃される時代。しかし灰は、最低ランクの魔力しか持ち合わせていなかった。故にゴミと蔑まれ、それでも難病を患った妹、凪を治療するために全力を尽くす。しかし所属していたパーティーからの追放と病状悪化という泣きっ面にハチの事態となり。金策に困った彼は一縷の望みをかけ、突然出現したダンジョンの元、黄金のキューブの調査任務へと向かう。

 

「だから、あとは頼みますね」

 

 だがしかし、簡単な筈の調査は「神の試練」というものへと姿を変える。理不尽で悪趣味な試練の数々に、日本の超常者達と、合同調査を行う米国の者達が次々と散る中。勇気と知恵で道を切り開いた灰は最後の試練の中で己の命を捧げる事と決め。共に試練を潜り抜けた日本のトップギルドの重鎮、一誠へと妹の事を託し。彼とその仲間を脱出させる。

 

そこで彼の命は尽きる筈であった。だが、尽きなかった。最後の最後まで諦めなかった、それが最後の鍵。最後の試練をクリアした彼は、全てのステータスを見れる「神の眼」の異能を手に入れ、現実へと帰還を果たす。

 

そして、彼が手に入れた「神の眼」はとんでもないものであった。それは文字通り全て、他の冒険者から武器、魔物からキューブに至るまであらゆるもののステータスを見通すことのできるもの。その力は、キューブに隠された魔力増加の条件までを見通す事が出来る。それは強くなるための第一歩。一誠という後ろ盾も得、彼は一人こつこつとソロで攻略を進める中。日本ダンジョン協会会長の孫娘、彩(表紙左)の護衛依頼を受ける事となる。

 

ダンジョンに興味のある学者肌の彼女の探索、物見遊山程度のそれはやはり波乱が待っている。世界的に有名であるテロリスト、滅神教の実力者が彩を狙い襲い来る。

 

「諦めないことが取り柄だろ!!」

 

戦いを乗り切る鍵は、無能とカテゴライズされている彩に隠された力。諦めない、どんな時も最後まで。覚悟を以て守り抜く灰、その覚悟を受け彩が覚悟を決める時。彼女だけの力が目を覚ます。

 

しかしこれは新たな始まりである。迫っているのは、命の恩人であるレイナ(表紙右)との再会。果たしてそこに何が待つのか。

 

王道的に面白く、真っ直ぐな主人公が魅力的な今作品。骨太な現代ファンタジーが見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

灰の世界は神の眼で彩づく 1 ~俺だけ見えるステータスで、最弱から最強へ駆け上がる~ (オーバーラップ文庫) | KAZU, まるまい |本 | 通販 | Amazon