読書感想:攻撃力ゼロから始める剣聖譚 1 ~幼馴染の皇女に捨てられ魔法学園に入学したら、魔王と契約することになった~

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、メリクリウスとヴァイエイトというガンダムシリーズの機体をご存じであろうか。知らぬと言う読者様の為に簡単に解説すると、前者は防御力に重点を置き後者は攻撃力のみを追求した機体なわけであるが、前者の機体も火力は低いが多少は攻撃用の武装を持っていた訳であり。つまり何が言いたいかであるが、例え防御に重きを置いていたとしても、多少は攻撃力が無ければ戦闘においては役に立たぬかもしれぬ、という事である。

 

 

ではこの作品における主人公、ユージン(表紙左)はどうなのであろうか。持ち合わせた職業が重要なこの異世界において、彼の職業は「回復魔法使い」と「結界魔法使い」の二つ。どう見ても戦闘には向かない職業である。しかし彼の実家はこの異世界にある帝国でも有名な剣士の一家、当然落第の烙印を押されても仕方ない。その事実により将来の約束をした皇女、アイリから別れを告げられ。失意の彼は帝国を離れ、迷宮都市にある魔法学園へと入学する。

 

「見ない顔ね、少年」

 

 

 その場所で出会ったのは、墜ちた天使長であり千年前の魔王であるエリューニス(表紙右)。今までは親和性津が数多く蠢く牢の最奥に封印されている彼女は、唯一自分に近づけるユージンを気に入り契約を持ち掛ける。しかしそれは文字通り悪魔の契約、それ故に断り続けるユージン。そんな彼はある日、この町にある迷宮である神が造りし「最終迷宮」である「天頂の塔」に現れた異世界転生者であるスミレに出会い、彼女の世話係に任命され。共に迷宮を探検してみる事となる。

 

それが彼にとって、一つの転機であった。彼女が転生時に変化した種族は、伝説の存在であるイフリート。その魔力を借りる事で、ユージンもまた戦う力を得ることが出来た。そして攻撃力を手に入れたのなら、彼が身に着けていた剣技は力を取り戻す。力を手に入れた事で、どんどんと攻略は進んでいく。

 

しかしそうは問屋が卸さないと言わんばかりに、迷宮が牙を剥く。気の知れた仲間達と上る階層、そのボスとの戦いが突如神からの試練に変化し、神話級の魔物である地獄の番犬が姿を現し。あっという間にユージンとスミレを残し一行は壊滅してしまう。

 

 

(じゃあ頑張りなさい。私の可愛いユージン)

 

生き残る為には、手段は選べない。ここに契約は交わされ、魔王の力がユージンへと齎され。その先に彼はスミレと約束を交わす。彼女を元の世界に返す、という見果てぬ約束を世界が見守る中で。

 

今ここに全ては動き出した。彼が剣聖に至る道が。そして、スミレ、エリューニスと二人分の思いを抱え込んでいる彼の知らぬ所で、アイリもまた動き出していく。

 

迷宮ものと学園もの、二つの面白さの相乗効果が面白いこの作品。 欲張りな面白さを求める読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

攻撃力ゼロから始める剣聖譚 1 ~幼馴染の皇女に捨てられ魔法学園に入学したら、魔王と契約することになった~ (オーバーラップ文庫) | 大崎アイル, kodamazon |本 | 通販 | Amazon